今回発表された研究では、石川県志賀町で行われている生活習慣病に関する住民対象研究「志賀研究」のデータが用いられた。検討対象者は、志賀研究の参加者のうち便サンプルが採取されている人から、抗菌薬やステロイド薬が処方されていた人を除く239人。平均年齢は63±10歳、女性52.3%、BMI23.3±3.1、収縮期血圧136±17mmHg、拡張期血圧80±11mmHgで、44.8%が高血圧に該当した。また、食塩摂取量は9.4±1.9g/日(中央値は9.6g/日)だった。

 マイクロバイオーム解析結果の主成分分析により、腸内細菌叢のパターン(エンテロタイプ)を、タイプ1とタイプ2の2群に分類。かつ、食塩摂取量が中央値以下の群と中央値を超えている群の2群に分類。合計4つのグループに分け、臨床的背景を比較検討した。

 各群の高血圧有病率は、食塩摂取量が多い群のエンテロタイプ1では49.4%、エンテロタイプ2では46.7%であり、有意差はなかった(P=0.83)。一方、食塩摂取量が少ない群では、エンテロタイプ1が47.0%、エンテロタイプ2では27.0%であり、群間に有意差が認められた(P=0.04)。

 年齢、性別、BMI、エンテロタイプを説明変数とする多変量解析からは、食塩摂取量が少ない群ではエンテロタイプの相違が、高血圧と有意に関連する因子として抽出された〔タイプ2のタイプ1に対するオッズ比0.39(95%信頼区間0.15~0.99)〕。その一方で、食塩摂取量が多い群では、有意な因子は特定されなかった。

 次に、食塩摂取量と血圧との関連をエンテロタイプ別に見ると、タイプ2はタイプ1よりも両者の間に、より強い関連が認められた(近似直線の傾きが、収縮期血圧はタイプ1が1.23、タイプ2が2.00、拡張期血圧は同順に1.18、1.30)。

 これらの結果から、腸内細菌叢のパターンがエンテロタイプ1に該当する場合、減塩による血圧管理上のメリットが減弱する可能性が明らかになった。なお、エンテロタイプ1はタイプ2に比べて、Blautia、Bifidobacterium、Escherichia-Shigella、Lachnoclostridium、Clostridium sensuという6種類の微生物の割合が低いという有意差が存在した。

 以上の検討の結論として研究グループでは、「高血圧の予防や治療において減塩の効果のない人もいる。新しい介入法として、腸内細菌叢へのアプローチが期待され、両者の関連とメカニズムの詳細を探る今後の研究が求められる」と述べている。(HealthDay News 2020年10月19日)

Abstract/Full Text
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmed.2020.00475/full

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