「あの子にしてあげたからこの子も」で
逆に不公平になる理由

てぃ ぼくがよくたとえ話でするのが「平等」と「公平」はまったく別物だということなんです。「平等」って考えると、子どもをすべり台に上げるとき、一人の子を抱っこしてあげたんだったら、平等にほかの子も抱っこしてあげなきゃという考え方になっちゃう。

 でも「公平」っていう考え方だったら、いかにその子が自分ですべり台に登ったっていう気持ちをもってもらうかっていう視点だけで考えればいいんです。

 この子は強く蹴ることができるから少しだけ補助すればいい、この子はまったくできないから抱っこすればいいっていうふうにすれば、最終的にはみんな公平に、自分で上ったというゴールにたどりつける。

 でも、今、保育とか教育の現場でやられていることって「平等」視点なんです。「あの子にこう教えたから、同じようにやらないと不平等」。それって一人ひとりのためになっていないかなと思います。

坪田 子どもが自分で無理だと思うような困難を、いちばん努力で乗り越えやすいのが受験だと、僕は思っているんです。

 坪田塾は大学受験がメインなのですが、そのときに指導者の仕事は教材の選定だけなんですよ。ポイントは、その子がやったときに〇が6割、×が4割になる教材を選ぶこと。

 高校2年生の場合、小学1年生のたし算、ひき算だと〇が9割、10割になりますよね。だんだん学年が上がっていくと〇の割合が下がっていくわけです。それがたとえば小学5年生の教材で〇が6割、×が4割ぐらいだったら、そのテキストからはじめましょう、徐々に段階を踏んでいきましょう、とやっていきます。

 なぜ〇が6割、×が4割かというと、いちばん集中が途切れず、なんとか自分でできる割合なんですよ。

 〇が8割で×が2割だと簡単すぎるんです。逆に実際の年齢が高3だとして、高3のテキストをやったときに×が8割だと難しくてだんだん集中できなくなってしまう。

 さきほどのすべり台の補助の考えと同じで、〇が6割、×が4割になる教材というのは、人それぞれ違うので、まったく同じく平等に同じ教科書を与えることは絶対にしません。そこの強度の調整というか、見極めというのが、ぼくらの仕事なんです。

 ここで気を付けていることがあって、高校3年生に小学4年生のテキストをそのまま渡すとたいていの子は嫌がるんです。

てぃ プライドが傷つきますよね。

坪田 はい。そこで“小4ドリル”という記載を消して、渡すんです。

てぃ おもんぱかってるなぁ!(笑)

坪田 そうそう。でもすごく大事なんですよね。幼児と高校生、年齢層は違えども、やってることは同じなのかなぁと、てぃ先生の本を読んでいて感じました。

大学受験生の教材選びと、幼児をすべり台に上らせる補助の意外な共通点とは?
てぃ先生(てぃーせんせい)
関東の保育園に勤める男性保育士
保育士として勤務するかたわら、その専門性を活かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディアなどで発信。全国での講演は年間50回以上。
他園で保育内容へのアドバイスを行う「顧問保育士」など、保育士の活躍分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。
ちょっと笑えて、かわいらしい子どもの日常についてのつぶやきが好評を博し、Twitterフォロワー数は50万人を超える。
著書である『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(ベストセラーズ)は15万部を超える大人気作。コミックほか含め、著書は累計50万部を突破している。
ちなみに、名前の読み方は「T」先生。最近ではYouTubeに動画を投稿し始め、チャンネル登録者ははやくも25万人を超えている。
大学受験生の教材選びと、幼児をすべり台に上らせる補助の意外な共通点とは?『「人に迷惑をかけるな」と言ってはいけない』坪田信貴(SB新書)
「人に迷惑をかけるな」「勉強しなさい」「やる気あるの?」。子育てをしていると、ついつい使ってしまう言葉ですが、実は心理学的に子どもにとって逆効果になっていることがあります。たとえば、「人に迷惑をかけるな」は海外で子育てには使われません。むしろ、「困っている人がいたら助けよう」という言葉のほうが強調されます。一方、「人に迷惑をかけるな」といわれると、自ら自粛してしまうように育ちます。だったら、どうしたらいいの?という疑問に、坪田先生が実例と心理学を用いて、グローバル時代・AI時代の子育てを解説します!