『週刊ダイヤモンド』11月14日号の第一特集は「最強の武器『経済学』」です。2020年ノーベル経済学賞を受賞したゲーム理論、それに行動経済学を中心として経済学の知見の応用が広がっています。企業の戦略決定、マーケティングなどビジネスの現場でも本格活用が始まりました。ビジネスパーソンは今こそ、この最強ツールを手に入れるべきです。基礎の基礎から応用実践編まで完全マスターするための特集です(ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)
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ゲーム理論に支えられている

言わずと知れた世界の巨大テック企業、米GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)。実はその強大なパワーの裏で、経済学が力を発揮していることをご存じだろうか。
何しろ、日本ではそうした動きは限られているのが現状だが、米国では経済学者がテック企業などに所属し、ビジネスに関わるのは決して珍しいことではない。
例えばアマゾンでは、グローバルで約200人に及ぶ経済学の博士号取得者がいるとされる。そして、「重要な意思決定を行うときには、ほぼ必ずといっていいほど経済学者の知見を生かしていた」と、最近まで同社に勤務していた元社員は驚きと共に振り返る。
このほどダイヤモンド編集部の単独インタビューに応じた、米カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院のスティーブン・タデリス教授もその一人だ。
タデリス氏は2011〜13年、世界最大のオークション(競売)サイトを運営する米イーベイでエコノミストを務めた後、16〜17年にはアマゾンでVP(ヴァイスプレジデント)の職に就いていた。
同氏は「米国のテック企業の間では、経験豊富な一流経済学者の引き抜き合戦が起きている。企業は学者が教授職の報酬として大学から受け取る金額の約2〜5倍、時には10倍にも上る報酬を示して引き入れるケースが見られる」と、その激しい競争の実態を明かす。
企業側のニーズを引っ張るのが、現代経済学の2本柱、ゲーム理論と行動経済学。両分野が経済学を主導する様は、この四半世紀のノーベル経済学賞の実績を見れば一目瞭然だ(下表参照)。
今年もゲーム理論の応用分野、「オークション理論」を研究する米スタンフォード大学のロバート・ウィルソン名誉教授(下写真)らに贈られたように、二大分野の研究に受賞が集中しているのが分かる。
