フェイスブックはオークション理論
グーグルはマッチング理論を活用する
ではなぜ、テック系を中心とした世界のトップ企業の間で今、必死に経済学者を囲い込もうとする動きが広がっているのだろうか。
背景の一つに挙げられるのが、テクノロジー企業の急速な台頭だ。例えば前出のタデリス氏は「世界中のあらゆるオンライン広告は、まさに『オークション理論』に支えられている」と指摘する。
実際、フェイスブックではビジネスの主戦場であるオンライン広告において、オークション理論を大いに活用しているのだ。また、実はグーグルの検索連動型広告もその仕組みの大本にはオークション理論が根付いている。
さらに、グーグルでは、ゲーム理論のもう一つの代表的な応用分野、「マッチング理論」の仕組みを取り入れ、多士済々のテック人材の配置にも生かすなど、その活用の裾野は極めて広い。
そもそもゲーム理論とは、合理的なプレーヤーたちの間で繰り広げられる読み合い、せめぎ合いを分析するもの。そこで分析される状況は、企業の戦略を中心に幅広く応用されている。
一方の行動経済学は、人間の非合理的な面に着目し、リアルな意思決定の在り方を掘り下げるものだ。ゲーム理論も行動経済学も、実験によってデータを集め、検証が繰り返されることで知見を深めてきた。そして、両者にまたがるような実験経済学のアプローチは進化を続け、計量経済学のデータ分析手法と共に実社会へと活用の場を広げていった。
これら経済学の発展と併せ、現実のビジネス界で生じた見逃せない変化として、AI(人工知能)や機械学習、ビッグデータなどを活用する必要性が高まってきたことがある。一連の新たな技術をうまく活用するため、経済学上の重要なキーワードとなるのが、集めたデータの因果関係を推測する「統計的因果推論」だ。
因果推論は、大量のデータを分析してビジネスに生かす際、重要となる基本的な考え方だ。だが機械学習の場合、膨大なデータの間にある相関を見ることはできるものの、あるテック企業で活躍する工学部出身者は、「工学系の人は意外と因果関係を見落としがちなところがある」と話す。
そして、この因果推論法が歴史的に最も洗練され、確立している学問こそが経済学。そんな背景もあって、経済学者には続々とテック企業からの引き合いが増えている実態があるのだ。