たとえばオオバコという雑草は、道ばたや車のわだちなど、「踏まれやすい」場所にわざわざ生えている。オオバコは“踏まれるスペシャリスト”だからだ。

 オオバコの葉は柔らかいが、中に丈夫な筋がしっかりと通っているため、踏みにじられても、なかなかちぎれない。茎は外側が硬く、中はスポンジ状になっているため、よくしなる。踏まれても、しなるので折れにくいのである。

 また、実はオオバコの種子には粘着物質がついており、人間の靴や自動車のタイヤにくっつくのだという。人や車に踏まれることで種子が運ばれ、生息域を広げていくことができるというわけだ。

 つまり、オオバコにとって、踏まれることはマイナスにはならず、むしろ踏まれなければ困ってしまう。オオバコは踏まれても大丈夫なように、そして踏まれることを利用して生き残れるよう、進化してきたのだ。

多様なオプションを用意することで
「不確実」に対応

 本書によると、人がしょっちゅう草取りをするような場所で、強さを発揮する雑草もいる。刈られるだけではなく、根っこごと引き抜かれても繁殖するという。

 草取りをしたはずなのに気がつくとまた雑草がびっしりと生えてくるのは、雑草に引き抜かれることを前提とした戦略があるからだ。

 この戦略をとる雑草は、地面の下に膨大な数の種子を蓄積する。植物の種子は、空気と水と温度の条件が整えば発芽するが、これらの雑草は、条件がそろってもすべての種子を芽生えさせない。地面の中で発芽のタイミングを待つ種子を待機させておくのだ。

 その発芽のタイミングとは、光が差し込んだ時である。雑草が生えそろっている時には、土の中に光が差すことはないが、人間が草取りをして土がひっくり返ると、土の中に日光が入り込む。そうすると、土の中で待機していた種子が、これ幸いとばかりに一斉に発芽する。これが、草取りした後に、再び雑草が生えてくる理由だ。

 オナモミという雑草の戦略も興味深い。この草は、「ひっつき虫」とも呼ばれるトゲトゲした実をつけるのだが、実の中には種子が2つ入っている。1つは早く芽を出す「せっかち屋」の種子で、もう1つは発芽が遅い「のんびり屋」の種子だ。

 種子は、環境や状況によって早く発芽した方がいい場合と、遅い方がいい場合がある。オナモミは、そのどちらにも対応できるよう、2種類の種子をつける。予測不能な不確実で不安定な環境で生える雑草ならではの工夫である。