だが、実際のところ、ゲーム1のプロマネ部門での成功確率は極めて低い。会社の中で誰もがその成功を褒めそやすほどの成果というのはそもそもほとんどない。当人としては大きな成功と考えていても、誰もが称賛する大成功でなければ、会社はそもそも成功とさえ認知していない。そうなると当人はゲーム1に参加しているつもりでも、会社での扱いはゲーム2の参加者としての人材となる。

 もう一つの専門職部門も、会社でトップレベルくらいまでは行けても、日本レベルでトップや世界クラスということになると、いばらの道である。また、会社がその領域に深い関心を寄せていればよいが、関心が低ければ世界レベルの研究者でありながら、社内ではしょせん部長止まりといった例も珍しくない(最高でも専門職としての役員待遇というのが多い)。

 したがって、ゲーム1への参加を試みる者は、プロマネ、専門職部門とも、それなりの覚悟を持ち、会社内での出世はなかばあきらめてゲームをしていると認識しておく方がよいだろう。

ゲーム2に参加しているのに
「ゲーム1の戦い方」をしてしまう罠

 ゲーム1の成功確率は極めて低い。ゆえに、多くの人が実際参加しているのはゲーム2「組織人としての出世ゲーム」だ。にもかかわらず、多くの人がこのゲームの真のルールを知ろうともせず、ゲームに合わせた行動をすることもなく、あたかも自分はゲーム1のプロマネか専門職部門での成功を期待されている人材であるかのように考えている。そして、プライドを捨て、「組織人としての出世ゲーム」をまっとうした人に出世という勝ちをさらわれてしまう。

 すなわち、ゲーム1レベルの大成功ができなかった人材は、ゲーム2で評価されるような(3)「組織にとって(そこそこ)役立つ」レベルの貢献をしたとしても、(1)「かわいがられる努力」や(2)「有力者にとって役に立つ」行動をしなかった場合は、(1)と(2)をわき目もふらずにやり遂げた人に完敗してしまうということだ。

 取締役会(社外は除く)比率を考えてみるのも面白い。大まかにいって、ゲーム1の勝者とゲーム2の勝者は、2:8よくて3:7くらいであろう。ほとんどの役員が確固たる業績(会社にとって)が何もないのに出世しているのだ。逆さに振っても本当に何の実績もない人すらいる。

 出世ゲームの種類の別とそれぞれのルールをしっかりと把握し、プライドをかなぐり捨てて、勝つべく行動したのだから、それはそれで大したものだということもできる。