コロナで出世ゲームは
どう変わるか
これからの時代はDXをはじめとした大変革期に入るからチャンスに満ちている。会社は作り替えに近いくらいの大変革になるから、実は「仕事人としての出世ゲーム」のプロマネ部門での成功可能性は過去よりはずいぶん高い。また、専門職部門も、「ハード×ソフト×データ」といった新領域が出てくるので、新たな参入可能性が広がる。ゲーム1は活性化するし、ここでの勝者は高く評価されるようになるだろう。いい時代になった。
一方、そうはいってもまだまだ多くの人が参戦するゲーム2はどうなるだろうか。ゲーム1が活性化しようとしまいと、人の評価の在り方そのものは変わらない。たとえジョブ型になろうと、相変わらず社内の有力者が人を引き上げる構造は変わらないのである。むしろ、ジョブ型に変わった場合、出世に対して人事部の関与が今より下がるから、自分の上司筋に気に入られるかどうかこそが、出世の決定的な要因になるともいえる。
さらに、リモートワークの世界になってくると、有力者は昔よりもかなり疑心暗鬼の状況になる。毎日顔を合わせなくなると不安になるのだ。自分の知らないところで、よからぬたくらみがはりめぐらされているのではないか、裏切られるのではないかと夜もおちおち眠れないはずである。
その意味では、(1)かわいいか、かわいくないかがさらに重要になり、なかでも、自分に忠誠を誓ってくれるか、裏切りを示唆する疑わしい兆候はないか、といった点が重要になってくるだろう。今まで以上に、毎晩、飲み会(あるいはZoom会議)に付き合わされることになるかもしれない。
ゲーム2の参加者は、いろいろな点で監視されるようになるかもしれない。有力者に二股、三股をかけていると、それが実は筒抜けで、得ていた寵愛を失うかもしれない。社内政治の権力構造の中でいかに生き残るかは、本物の政治家の世界さながら、これまで以上に厳しい時代になるだろう。
ゲーム1もゲーム2も熾烈な世界である。プレッシャーは強く、個人にかかるストレスも大きい。したがって、これらの出世レースとは無縁のスローライフ的な仕事の仕方や、社会から称賛されるほどではなくても、自分の専門性をもとに確実に生産性の高い業務を完遂する個人事業主、専門家として生きるといった道を選ぶ人は増えてくるであろう。
また、これらの生き方に対しての社会的評価も大きく変わってきた。昔は会社に属していなければ一種の落伍者的な扱いを受けたかもしれないが、今ではスタートアップの経営者やYouTuberや自分の専門性を生かした個人としての働き方は、憧れの対象とさえ言える。とはいえ、上記のような会社におけるシビアなゲームの勝者に対しての報酬額と、それ以外の報酬額の差は一般的に見てかなり大きい。お金以外のことにどれだけの価値を見いだせるかという生き方の哲学を確立することが、重要になってくるだろう。
ただ、きれいごとを横に置くと、お金を重要視しないということは、新しい生き方を提唱する人やマスコミの人が言うほどには、どうも簡単なことではないようだ。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)