──アスリートの経験というのは、社会でもすごく価値のある資質を生み出していると言えますね。
末續:実際に僕もそうでしたけど、アスリートって「自分はここでしか生きられない」「この競技以外何もできない」と刷り込まれ、自分でもそう思い込んでいる人がすごく多いんですよ。
でも実は、アスリートほど目標に向かって緻密にタスクを考え、スケジュールを組み立てる力や自分を律する力、レジリエンス(折れない心)など、どこへ行っても役立つ資質を高いレベルで備えていると思うんです。ただ残念ながら、このような資質をコンバートして広く社会で活用するという発想がまだまだ浸透していないので、アスリートのセカンドキャリアについてはもっと企業側にも前向きに考えてもらえたら嬉しいです。
「かけっこが早くなりたい」子どもたちへ
──最後に、もうひとつだけ。とにかく「かけっこが早くなりたい!」「少しでも早く走りたい!」と思っている人はたくさんいると思うのですが、たとえば小学生のお子さんになら、どんなアドバイスができますか?
末續:僕が方法まで教えると、「自分の身体に意識を向け、心の内側と意思の疎通をする」っていう大事なことをしなくなっちゃうので、「僕は知りません」って答えたいところですが(笑)。でもそういう目標を掲げているのは本当に素晴らしいことで、たいしたもんです。
だから僕からのアドバイスはあえて2つ。ひとつは、キョロキョロよそ見をせず、前だけを見て走ること。もうひとつは、「わー」とか言いながら、大声を出して走ること。これは技術というより、集中につながるようなコツと言えるかな。ぜひ試してみてください。