ただ、老婆心ながら言わせてもらうと、あまりカッカとされない方がいいのではないか。ナイキをかばっているわけではなく、もし本当にナイキにダメージを与えたいのなら、このCMを誹謗中傷したり、不買だ抗議だと過激な行動に走ったりするのは逆効果になる可能性が高い、と言いたいのである。

 つまり、キレてナイキを攻撃すればするほど、ナイキの「得」になるという、なんとも皮肉な結果を招いてしまうのだ。

もともとは米国で成功した
スキームを利用した「日本版」

 すでにネット上で一部の人々が指摘しているが、今回のこのCMは2018年にアメリカで行われた30周年キャンペーンの成功を受け、同じスキームを応用した「日本版」である可能性が高い。

 この30周年キャンペーンでもナイキは、人種差別の問題提起をした。黒人差別への抗議のため、試合前の国歌斉唱中に起立することを拒否してひざまずくというムーブメントを生み出したコリン・キャパニックを広告に起用し、こんなメッセージをデカデカと掲載したのである。

「Believe in something, even if it means sacrificing everything」(何かを信じろ。たとえそれが全てを犠牲にするとしても)

 これは、アメリカの世論を真っぷたつにするほどの大論争になった。実はキャパニックの「膝つき抗議」は支持する人もたくさんいたが、国やスポーツへの冒涜だと批判する人もかなりいた。中でも激しく攻撃したのが、トランプ大統領やその支持者である保守派の人々である。

 彼らは「キャパニックの行動は国への敬意を欠く行為だ」と批判して処分を求め、実際にNFLはこのような抗議行動を禁止にした。キャパニック自身も契約を早期に打ち切られ、チームを追われた。このような「勝利」を収めた「愛国者」たちからすれば、ナイキは「反米アスリート」を支持する「反米企業」以外の何者でもない。

 実際、この広告を攻撃した「愛国者」の中には、ナイキのスニーカーを燃やす動画をSNSに投稿したり、不買を呼びかけたりする人たちも現れたのだ。