国語や社会ができない人にも『最高の理系の教育』を受けさせたい!

――『反省記』では、ビル・ゲイツに初めて会ったときから、マイクロソフトの礎を築いていく話、その後のアスキーの話など、まさに西さんがビジネスの最前線で活躍し、苦悩し、葛藤した姿がリアルに描かれています。

 そして、最後には「これからの話」も触れています。西さんが、これからの人生において、やりたいこととは何なのでしょうか?

『反省記』は三幕に分かれていて、第一幕はマイクロソフトの話で、第二幕はアスキーのこと。そして、第三幕は、これから僕がやろうとしている「日本先端大学」という、工学部のみの単科大学をつくるという話です。

 これまで「大学の新設」に関しては、「できたらいいな」くらいの気持ちでいたんですけど、今は違います。絶対につくる。この本はその宣言でもあるんです。

 大学をつくるとなると、だいたい100億円くらいかかるんですが、それくらいだったら集められる。そんな自信ができたので、外部の人にも公言することにしました。この本の話を受けたとき、まさにその気持ちが固まったという時期でもありました。

人生において「成功」と「失敗」の“境界線”はない

――そもそも西さんは、なぜ「日本先端大学」をつくろうと思っているんですか?

 僕は今、東大で教えているんですけど、東大って国語も、社会も、英語も、理科も全部できないと入れないんです。

 でも、コンピュータを作ることに「国語はいる?」「社会はいる?」「世界史、日本史はいる?」と考えていくと、別に全部はいらないと思うんです。

 もともと東大に入れる人はいいんですけど、国語がダメで東大に入れない、社会がダメで入れない、そういう人は多いわけです。東大だけの話じゃなくて、苦手科目があるからという理由で、早稲田に入れない、慶応に入れないという人はたくさんいます。

 そうなると「偏差値の低い大学へ行くしかない」ということになるんですけど、そういう人たちのなかにも、コンピュータに関してはめちゃくちゃデキる人はいっぱいいるんです。

 僕は中学生、高校生も大勢見ていますけど、彼ら、彼女らのなかには「こいつは将来、そうとう活躍しそうだな」という人は本当にたくさんいます。

 でも、そういう人が、たまたま社会ができない、国語ができないというだけで、その可能性が潰されてしまうとしたら、もったいないでしょう。可哀そうです。

 そういう人たちにも、レベルの高い教育を受ける機会を与えたい。それが、結果として日本の産業に役立つ。そういう思いで「日本先端大学」をつくりたいと思っているわけなのです。

――ちなみに、西さんにも苦手な教科はあったんですか?

 そりゃありましたよ。日本史も、世界史もダメでした。漢文や古文はできたんですけど、現代文は全然好きじゃなかったです。

 ある有名な評論家の文章が国語の教科書に載ってたんですけど、それがめちゃくちゃ難解な文章なんです。何が書いてあるのか、さっぱりわからない。でも、それを国語の先生がえらい褒めているわけです。そんなのおかしいでしょう。

「なんで、こんなわかりにくい文章を書くねん。文章なんて、わかりやすくてナンボのもんでしょうが」って思ってましたし、それは今でも自分が正しかったと思ってます(笑)。

人生において「成功」と「失敗」の“境界線”はない高校卒業式のときの西和彦氏。痩せていた!!

――たしかに、別に国語や社会ができなくても、世界で通用する人材になる可能性は十分にありますよね。西さんが、それを体現されています。

 そうなんです。ただ、日本で作ったものを世界中で売ろうとしたら、間違いなく英語は学んでおく必要があります。世界で通用する英語ですね。ここは、もうちょっとなんとかしたほうがいいと思ってます。

 たとえば、僕は毎週新幹線に乗るんですが、以前、新幹線の車内アナウンスは録音されたテープだったんです。でも、最近は車掌が実際に肉声でアナウンスしています。それは素晴らしいことなんですけど、人によっては英語にかなり問題があるんです。

「Thank you for riding Tokaido Shinkansen.This is Hikari 226 bound for Osaka」とか言ってるだけなんだけど、その英語がまるで田舎の方言なんです。日本語で言ったら「みなはん、乗ってもろうて、ありがとござんす」みたいな感じ(笑)。

 そういうのはしっかり学んでおかないと、ビジネスにはならない。日本の製品を世界で売ろうと思ったら、「ありがとうござんす」だとちょっと具合悪いです。それに、英語力も「This is a pen」のレベルでは通用しない。きちんとプレゼンできるレベルの英語力を身につけることは必須です。

 はっきり言って「日本の英語教育はどうなってんねん!」という思いはありますけど、大学からでも遅くはないので、世界に通用する英語だけはきちんと学んでおいた方がいいですね。

――西さんは、英語はどこで覚えたんですか?

 マイクロソフトで、覚えました。

人生において「成功」と「失敗」の“境界線”はないマイクロソフト社の前で撮影。

――でも、西さんは、マイクロソフトに入る前から、アメリカに飛び込んでいって現地の人たちとコミュニケーションとってましたよね? ビル・ゲイツにも“直電”して英語で口説いてますよね?

 まぁ、それは、日本の学校で学んだ英語で必死に伝えたわけ。「伝えたいこと」があったから、なんとかなったんでしょうね。でも、マイクロソフトに入って、本格的にビジネスをやるとなると、日本の英語力じゃダメでした。最初はちょっと苦労しました。

 でもね、英語なんてたいしたことないんですよ。だって、海外に行ったら、みんなしゃべってるんだから。ちゃんとした訓練をしたら、誰だってできるようになります。