表面上は不満をのみ込む中国
トランプ政権が進めてきたように、中国の対米貿易黒字(米国から見れば対中貿易赤字)が減れば、中国による米国債の保有という弱点は解消します。
今、中国は米国に対して年間40兆円の対米貿易黒字を抱えています。これを減らすための努力が、2020年1月15日に第1弾の決着となった米中貿易交渉でした。
ところが次世代通信規格「5G」の輸出を止められ、ほかの輸出商品を買ってもらえなくなると、中国は貿易赤字に陥る可能性があります。すると保有米国債もどんどん減っていきます。これでは中国は米国と戦えません。
既に一部の市場では起こっていますが、米中新冷戦を意識した市場参加者の中には、中国とのすべての取引をドル決済にすることを求めるケースもあります。これが拡大すると、中国が外貨としてのドルを失い、米国からの輸入や一帯一路の推進などが滞る可能性も出てきます。まだ十分に技術力が追いついておらず、これから10年は米国と戦争をしても勝てないはずです。
そう考えると、中国の選択肢は少なくとも表面上はひとまず米国と協調する以外に道がないのです。
中国は当面の間、多くの不満をのみ込む必要があります。もちろん表面上の姿勢でしかありませんから、腹の中では米国の力が落ちて世界の覇者から脱落することを虎視眈々と狙っているはずです。
3000年の歴史を持つ国ですから、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)を続けることに抵抗がないのかもしれません。
逆に米国は、現時点では表面上は協調路線を取らざるを得ないという中国の事情を分かった上で、強気の対中戦略を展開しています。それは決して、トランプ大統領の下らない感情論でも浅はかな思いつきでもありません。
表面上は協調路線を取ろうとする中国と、今のうちに中国の台頭を押さえつけたい米国。
2つの大国の覇権争いこそ2020年以降の世界を動かす最も大きな力となるのです。