雇用確保の支援はするが
業種転換や転職・再就職が前提

 菅政権の中小企業政策をわかりやすく表現すれば、「観光関連産業は救ってやるが、それ以外の中小企業は潰れて構わない」「ハゲタカファンドや外資系企業の餌食になって構わない」「職に困った連中は観光業に転職して外国人観光客相手に商売しろ」と言っているようなものだ。

「新たな人の流れの促進など地域の独自の取組への支援」も規定されているが、地方への人の流れを作りたいのなら、インフラをはじめとした地方への大規模な公共投資を通じて生活や仕事の利便性を高めることである。地方への移住は長期観光ではない。生活の拠点を移すことなのであるから、テレワーク拠点等が整備されればなんとかなるという類の話ではない。東京からの流出超過が続く中(実態としては入ってこないということなのだが)、これを好機と捉えるなら、手厚い公共投資を躊躇なく進めることである。

「成長分野への円滑な労働移動等の雇用対策パッケージ」なるものも規定され、「業種転換等による雇用確保も視野に、出向や早期再就職による新たな分野への円滑な労働移動の支援や〜(中略)〜雇用対策パッケージとして総合的に取り組む。」とあるが、その心は、雇用確保の支援はするが業種転換や転職・再就職が前提であるということ。

 つまりは中小企業再編政策と軌を一にしているということであるが、人はそう簡単に全く経験のない仕事に就くことなどできない。それをあたかも一つの箱に入っていたものを別の箱に移すかのように考えるのは、机上の空論であり、全く現実性のない話だ(それを強行に主張されるのなら、ご自身が全く未経験の仕事にでも直ぐに就いてみてはいかがか)。

 要するに、本気で今の雇用を守る気はないということであろう。

「家計の暮らしと民需の下支え」とあるが、家計の下支えと言っても、基本は融資。携帯の料金を引き下げても、もともとさまざまなプランがある上に、無料Wi-Fiの普及で通信料のさらなる低減は可能なのだから、家計負担の大幅軽減にはつながらない。家計にとって一番の負担は消費税である。

「携帯料金値下げは消費税率○%の引き下げに相当する」といった詭弁はもういいので、早期にゼロ、少なくとも5%に引き下げるべきだ。

 そして、少子化にも本気で取り組むのであれば、待機児童問題や不妊治療よりも、まずは貧困問題の解決である。そのためには、派遣労働の規制強化、コーポレートガバナンス改革をやめて元に戻すこと、四半期決算の廃止、公共投資を増加させて、例えば介護職や保育職などを公務員化して給料を上げることなどにより「家計の暮らしと民需の下支え」をすることを検討・実現すべきであろう。

菅政権は
何をしようとしているのか

 これらのほか、「世界に開かれた国際金融センターの実現」や「更なる輸出拡大を軸とした農林水産業の活性化」といった、現下の状況を踏まえない、新型コロナ不況対策とは無関係であることが一目瞭然のものもある。

 そうしたものについての問題点の解説などは文字数の関係で割愛するが、いずれにせよ、緊張感も現実感も欠ける第3次補正予算を通じて菅政権は何をしようとしているのだろうか?

 筆者の頭には、「亡国」や「衰退」「荒廃」「疲弊」といった言葉しか浮かんでこないのだが…。