一般に、ウイルスの感染力と毒性は反比例する。毒性が強く宿主がすぐに死んでしまっては、ウイルス自身も繁栄できずに終わってしまう。一方、毒性は弱く軽症程度にしておいて、上手く感染する術を身につけたウイルスほど、拡がりやすい、ということだ。

 実際、現時点では毒性は強くなさそうだ。もちろん感染者数は増え分母が大きくなれば、重症者数と死者数も実数としては増えるだろう。欧州各国ではウイルスの遺伝子配列をきちんと追い、比較を行っているから変異が直ちに明らかになり、その割合も把握できている。

 また、もう一つ気になるのは、変異種は従来種と違って、子どもに感染する傾向が高い兆候があるとの報道だ。その場合、ワクチン接種の対象者を見直す必要が今後出てくる可能性もある。さらに言えば、新型コロナは変異を続け、過去に感染したり、ワクチンで得た免疫の攻撃からエスケープし続け、世界各地で局所的な流行を繰り返し、リニューアルしたワクチンを何度も受けなければならないような、まるでインフルエンザのような感染症として人間界に定着するのかもしれない。

未知その3:
「感染拡大を防ぐ効果」があるとは限らない

 未知の要素3つ目は、ワクチンの「感染拡大を抑える効果」だ。

 話題となったワクチンの「有効性」は「発症予防効果」のことで、「感染予防」は、また別の話。

 感染症に対するワクチンの「有効性」は、「感染しないか」ではなく「発症しないか」で判断する。ワクチンの接種者と非接種者の発症率を比較して、「接種によって発症者がどれくらい減ったか」で示される(厳密には「有効率」だが、通常はワクチンの「有効性」として扱われる)。

 ピンと来ないと思うので、具体的に数字で考えてみる。

 4万人の臨床試験で、ワクチン接種者と非接種者がそれぞれ2万人だった時に、接種者から10人発症し、非接種者は200人発症したとする。発症率は接種者0.05%、非接種者1%だ。ワクチンによって発症率が95%下がっている。これが「95%の有効性」だ。

 なるほど、と済ませてはいけない。

 数字を細かく見ると分かるが、「非接種ながら発症しなかった人」が1万9800人いる。他方、「接種して発症していない」1万9990人も、ワクチンが発症を防いでくれているのかどうか、厳密には不明だ。

 つまり、ごくごく一部の方々の発病の有無をもって、しかも「臨床試験の全被験者が均等に感染リスクに曝されている」との前提(あくまで仮定)に立って、ワクチンの有効性を示しているに過ぎない。

 さらに、集団内でのウイルス拡散を抑える効果となると、「発症」より手前の「感染」を予防する効果が示されなければならない。

 これまでのところ、ファイザーのワクチンが他者への感染を防ぐ効果があるか否かは不明だ。一方、モデルナのワクチンは「臨床試験で、ワクチン接種者は偽薬に比べ無症状の感染者が約3分の1」で、「無症状感染者からウイルスが広がるのを抑える可能性がある」と報じられた

 また、世界3大科学誌の1つ『Nature』によると、英アストラゼネカ(英オックスフォード大学と共同開発)のワクチンも、感染抑制効果が得られる可能性があるという。