KF健保組合は
取材を拒否

 アダストリアをはじめとするアパレル小売各社が業容を拡大する一方、卸問屋は90年代から不要論が出ている。成功しているアパレル企業の多くは自社で商品開発をしており、卸問屋とは取引がない企業は少なくないからだ。実際、KF健保の幹部が経営している問屋の一部は、本業ではなく不動産業等で生計を立てている。

 こうして卸問屋の存在価値が小さくなる中で、KF健保は成長分野のアパレル会社を戦略的に加入させていったのだ。

 仮に、卸問屋たちが長年の経験を生かし、若者を中心としたアパレル企業をサポートするために健保組合を運営しているなら、組合維持のためにある程度の負担もやむを得ないかもしれない。

 しかし、アダストリアの脱退を巡る経緯を見ると、KF健保は加入者の中心であるアパレル店員の不満や要望に耳をかすことなく、“既得権益”を維持することだけに腐心しているようである。

 同様の総合型健保と加入者の脱退を巡るトラブルは、アパレル業界だけに限らないようで、製薬業界などでも単一健保設立を目指した企業が脱退を阻まれているという。

 アダストリアはKF健保からの脱退について「KF健保との交渉について詳細な経緯はお答えできませんが、当社が単一健保の設立に向けて動いていることは事実です。従業員の負担を抑えながら、自社の多様な従業員特性に対応する保険事業や福利厚生を拡充し、安心して永く働ける環境を整備したいと考えています。業界を支える従業員を守ることが、業界全体の未来をつくっていくと考えています」と回答した。

 一方、KF健保は「いかなるメディアの取材も受けていない」と取材を拒否した。