生活保護を阻む最大の要因は
「扶養照会」だった

 つくろい東京ファンドは、生活保護を利用していない理由についても丁寧な聞き取り調査を行った。過去に利用したことのある人々が挙げた理由のトップ3は、「役所で嫌な目に遭った」(59%)、「相部屋の寮に入所させられた」(49%)、「家族に知られるから」(32%)である。利用歴のない人々の挙げる理由のトップは「家族に知られるから」(34%)となっており、他の理由には大差が見受けられない。いずれにしても、「家族に知られる」という可能性が、生活保護申請の高いハードルとなっているのは確かだ。

 生活保護を申請したことが家族に知られてしまうのは、生活保護法第4条に「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と定められているからだ。「あらゆるもの」には、親族による扶養が含まれる。第4条の2に「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と明確に書かれている。

 もっとも、第4条の3には、それらの規定は「急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない」とある。実の親が大富豪であっても、現在その人が生活に困窮しているのであれば、生活保護の対象になり得る。虐待やDVから逃げてきた場合も、家族の経済状態と無関係に、生活保護で安心を取り戻すことができる。しかし、このような詳細は、十分には知られていない。

 原則として、生活保護を申請すると、扶養義務者である三親等内の親族に「あなたの親族のカツオさん(例)が生活保護を申請しています。カツオさんに仕送りや同居など何らかの援助はできませんか」という書面が送付される。これが「扶養照会」である。

 期待される援助の範囲は、実は非常に幅が広く、必ずしも「カネ」だけではない。同居して生活を支えたり、あるいは仕送りを行ったりすることが不可能なら、時に会ったり手紙を送ったりする援助、通院時の付き添いを行う援助でもよい。どのような援助も不可能なら、援助しなくてよい。そのことは、扶養照会の書面にも明記されている。しかし、生活保護費を削減する財政論的な立場から見れば、有効なのは同居と仕送り、つまり「カネ」の援助だ。