生活保護で暮らす身内を
引き取らせるための「探り」では?

 東京都東部で暮らすエツコさん(仮名・40代)は、母親の病気と父親の事業での失敗から、生活保護のもとで中高生時代を送った。幸い、担当ケースワーカーに恵まれ、高校卒業後は就労して生活保護を脱却した。その後は職業生活を手放すことなく、結婚し、子どもに恵まれた。現在は共働きと育児の苦労、そして景気の影響などに直面しつつ、毎日を送っている。

 2020年、エツコさん夫妻のもとに、扶養照会の書類が届いた。エツコさんの夫の父親が生活保護で単身生活をしているからだ。決して豊かではない生活を送っている夫妻は驚き、途方に暮れた。役所からの「親族を援助できませんか」という問い合わせは、受け取った側には「援助しないと許さない」というプレッシャーとなる場合がある。

 エツコさんと義父は、良好な関係にある。子育てや日常生活で、義父の手助けを受ける場面も多い。エツコさんは「ありがたい存在」という。そして、「いざとなれば同居」という心づもりでいる。生活保護のもとで入所できる高齢者施設の介護内容を信用していないからだ。しかし、扶養照会には当惑したという。

「厚労省の偉い方々は、結婚して家庭を持ち、子どもを育てている私たち家族を『余裕がある』とみなしたのでしょうか? 『余裕があるんだったら、公助を切らせて』ということでしょうか? 義父を生活保護から脱却させる可能性がないかということで、私たちに探りを入れてきているのでは?」(エツコさん)

 筆者は「そんなことはない」と言いたい。扶養照会は、厚労省ではなく自治体が行う。しかし同時に、「そう思われても仕方がないかもしれない」と考えてしまう。

 ともあれ、扶養照会のメリットは、行政にも市民にも見出せない。コロナ禍によって生活保護へのニーズが高まっている現在は、「止めどき」だ。止めてしまうためには生活保護法の改正が必要だが、取り扱いを「原則として扶養照会をする」から「例外として扶養照会をする」へと変更することは、厚労省の通知1枚でできる。

(フリーランス・ライター みわよしこ)