不況とインフレの両方を警戒
インフレと景気は基本的には連動する傾向があります。ただし、必ず連動するわけではありません。インフレには2種類あります。
1つは、景気が良くなり、給料が上がり、需要が増え、生産量が増え、物価が上がっていくタイプのインフレです。
これは景気が良いときに起きるわけですので、物価が上がっても生活、家計、経営への影響は小さくおさまります。
もう1つは、景気が変わらず、需要が増えていない状態で、生産コストなどが上がり、物価が上がるインフレです。
これは景気の良し悪しに関係なく起きることがあり、景気が低迷しているときや後退しているときに起きることによって生活負担が大きくなることもあります。
これをスタグフレーションといいます。景気停滞を意味するスタグネーションと、インフレーションを組み合わせた言葉です。
日本の場合は、原油価格の高騰で物価が急騰した1970年代のオイルショックがその例と言えます。原油価格が上がり、物価も上がったことで、それまで続いてきた高度経済成長期が終わりました。
このとき、インフレに強いといわれている株がどうなったかというと、経済活動が伸び悩むようになり、株価が下落しました。
インフレに強いという性質はあるものの、景気の悪化にも強く影響を受けるため、結果として物価上昇の保険にならなかったのです。
一方、このときの金価格は堅調で、急なインフレと株価低迷が追い風となって急上昇しました。
また、1978年12月にはイラン革命がきっかけとなって第二次オイルショックが発生し、翌年末にはソ連軍のアフガニスタン侵攻によってアメリカとの関係が冷え込み、さらに金が買われることになったのです。
この例のように、金はインフレリスクの対策になるだけでなく、株や不動産のように不況の影響を受けるリスクも小さいのです。
つまり、市場の影響を受けにくいため長く持つことができ、長く持てるからこそ、いずれ来るかもしれないインフレや、オイルショック時のような突発的なインフレの対策にもなるということなのです。
(本原稿は『ゴールド投資──リスクを冒さずお金持ちになれる方法』からの抜粋・編集したものです)