発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター)。(初出:2021年2月5日)
発達障害の問題に完全対応した執務環境
このイラストが、僕の執務環境になります。営業マンと文章の仕事を掛け持ちするようになって以来、とにかく環境を整えなければどうにもならないと確信し、2年ほどかけてつくりこんできました。この環境は
・ほぼすべての必要なものに「一手」で手が届く
・「作業スペース」を極力広くとる
・「身体の負荷」を可能な限り小さくする
・チェックを怠ってはいけないものが常に「視界」に入るようにする
という4つの考え方で構成されています。
お子さまの勉強机にも応用可能ですし、机は人生をつくり出すものです。工夫しすぎて損はありません。
(1)机
まず、一番重要なのは作業スペースの広さです。もちろん、小さいスペースを上手に工夫して使えるなら、それは素晴らしいスキルだと思います。しかし、僕にそれはできません。僕にとって、作業スペースの大きさはそのまま「脳のメモリ」の大きさに直結します。なので、机は2つをL字型に組み合わせて使っています。パソコンを使う机と紙ベースの事務を行う机、この2つは絶対に別でなければ、僕は仕事ができないのです。また、座高が高めなので、最もフィットする75センチの高さのものをひとつ。さらに、それに合わせて高さを昇降調整できるものを組み合わせています。
※僕が使っているのは机①、机②(昇降式)
(2)モニタ
モニタが2台あるのも机と全く同様「作業スペースを広くする」ためです。短期記憶が極端に弱いので、タブを切り替えながら作業をすることが僕にはできません。一度画面から消えたものは完全に記憶から消滅してしまうのです。かつて会社で仕事をしていたころは、私物のモニタをもちこんで無理やりデュアルモニタにしていました。
※僕が使っているのはこちら
(3)イス
ずっと座り作業をする以上身体的なダメージを軽減する必要があります。僕は腰が悪いので、イスはポスチャーフィットのついたアーロンチェアを愛用しています。このイスは友人からのもらい物なのですが、かつて非常に安いイス(旧共産圏の刑務所にありそうな)を使っていた頃にずっと悩まされていた腰痛から解放されたのは本当に驚きました。なにがアーロンチェアじゃこちとら借金玉じゃ、という気持ちが長年あったのだけれど、座ってみたらモリモリ腰痛が改善したのでもう何もいえない。
※僕が使っているのはこちら
(4)キーボードまわり
キーボードは真ん中から2つに割れた分割型のキーボードを使っています。あまりなじみがないかもしれませんが、使ってみるとキーボードに向かって脇を締めるという動作がいかに背中や肩に負担をかけていたのか実感できます。
当然ながら、キーボードを打つときやトラックボールを使うときに腕を預けるリストレストは必需品になります。僕はキーボードをおそらく年間200万字以上打つのですが、このキーボードまわりの工夫をしていなかったため、かつてはひどい腱鞘炎に悩まされ痛み止めを飲みながら仕事を続ける羽目になりました。その結果どうなったかといえば、胃まで壊れました。
※僕が使っているのはこちら(著者の型番のものは現在廃盤のため、近い商品です)
(5)デスクオーガナイザー
向かって左側にはペンや計算機、小物類を入れるデスクオーガナイザーがありますが、これは中が見通せるメッシュのものを使うのが最も重要です。どれだけ消しゴムを買っても、どれだけシャープペンシルの芯を買ってもなくしてしまうあなたは今すぐ採用するべきです。
※僕が使っているのはこちら
(6)イヤーマフ
僕は感覚過敏が非常に強いので、音を遮るイヤーマフは絶対に手放せません。仕事をしていると、突然ちょっとした音が気になって何もできなくなることがあるのです。そんなときにイヤーマフは本当に助けになります。
(7)壁
目の前にある壁は、視界を遮って集中を阻害するものが目に入らないように据え付けています。実はこれ、大きな棚の背中なのです。自習室などで一人分のスペースが仕切りに囲まれていると妙に集中できるという体験をした人は多いと思いますが、あの設備を自宅につくらない理由はひとつもありません。
(8)カレンダーとして使うタブレット
左側にある小さめのタブレットは、常にGoogleカレンダーを表示しています。こちらの「究極カレンダー」については以前の記事で詳しく紹介しています。