発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります。
今回は、大盛況に終わったオンラインイベント「発達障害なんでも人生相談」で寄せられた読者の質問と、借金玉さんの回答をお伝えします。

発達障害の僕が発見した「リモートワーク中に仕事しないでネトフリを見てしまう」への解決策Photo: Adobe Stock

<相談>
 現在新卒1年目で、入社以来ずっと在宅研修なんですが一向に学生気分が抜けません。本来の能力の6割ぐらいで、遅れをやった感を出しながら行っていて、実際には、Netflixでアニメをずっと見てしまっています。不安感は増え続けるのにやる気が出ません。どうすればいいのでしょうか?

<答え>

悪くない時間の使い方です

 これ、別に悪いことじゃないですよ。お金をもらってネットフリックスを見ながら、6割程度の力で仕事を回せているわけですから。

 社会人1年目をバリバリやっていこうなんて意識が高すぎます。「置いていかれないように付いていく」くらいで、ちょうどいいのではないでしょうか。質問者さんはすごく優秀だと思うし、実際、優秀な人はみんな質問者さんと同じような時間の使い方をしていると思います。「優秀なやつほどちゃんとダラダラしている」といえば伝わるでしょうか。その優秀さがマンネリにつながらないように、工夫をしていけるといいですね。

 休みと仕事にメリハリをつけて刺激的な日常を作ることはいくらでもできます。とりあえず「何も考えず3日間ネトフリを見て、4日目に全てを何とかする」ことに挑戦してみましょう!「自分はダラついている」と感じる理由の多くは、「仕事と休み・遊びのメリハリがついてない」ことだと僕は思います。

仕事への注意を、人格否定と捉えない

 社会人1年目によくあるのが「一度怒られて落ち込むと、死んで全てを終わらせようとしたくなる」パターン。僕たち発達障害の持ち主は、特にこの傾向が強いように感じます。僕はこうした思考を「俺はダメだ効果」と呼んでいて、本でも「自己分析中の“全部ダメだ”は禁止」と書きましたが、この状態になってしまうと本来注意すべき具体的なポイントに意識が向かなくなってしまい、状況を悪化させる可能性があります。

 仕事への注意は、あくまで仕事に関する指摘に過ぎず、人格を否定するものではありません(人格否定パワハラ野郎は存在しますが……)。にもかかわらず「俺はダメだ効果」を生んでしまうのは、当事者が真面目すぎるから。真面目さは本来よいことなので、自分を傷つけるのではなく、生かす方向に振り向けていきましょう。

 仕事は成果が出ればそれでいいものであって「誰かの仕事=その人の人格」ではありません。もちろん働いているうちに、だんだん「自分らしさ」は見えてきますが、そもそも社会人1年目ではそんなことを考える余裕もないのが普通ですし、考えないほうがいいと思います。大事なのは、うまくやっていくこと。社会人一年目は、ちょっと意識低めなくらいでちょうどいい!

★大好評著者インタビュー「だから、この本。」
第1回 発達障害の僕が「毎日怒られていた子ども時代の自分」に絶対伝えたい2つのこと 
第2回 発達障害の僕が発見した「学校に適応できず破滅する子」と「勉強で大逆転する子」の決定的な差
第3回 発達障害の僕が失敗から見つけた「向いている職業」「避けるべき職業」
第4回 発達障害の僕が伝えたい「意識高い系」の人が人生から転落する危うさ