DHMOとは?

 しかし、化学物質DHMOはよく使われている。そのため、私たちの食べ物も私たちの体も大いに汚染されているままだ。ゾナーの署名活動の結果のように、この実態を知らせることで、多くの人がジハイドロゲンモノオキサイドの使用を禁止することに賛成したのである。

 ……と、ここまできて種明かしをしよう。

 DHMOとは水H2Oのことである。水分子は水素原子二個と酸素原子一個が結びついているので、ジハイドロゲンモノオキサイド(一酸化二水素)なのだ。

 ゾナーがこの調査結果から訴えたかったのは「あらゆるレベルで科学教育(理科教育)をもっと充実させるべきである」ということだった。「水」といわずに化学物質の「ジハイドロゲンモノオキサイド」という一見難しそうな、恐ろしげな名前にしたことで、コロリと騙されてしまう人の多さに警鐘を鳴らしたのだ。

「化学物質」というだけで「恐ろしい物質」というイメージを持った人がいるかもしれないが、化学物質とは、「モノの材料になる物質」のことだ。

 化学に関する知識が少しでもある人ならば、すぐに「この話はジョークだな」とニヤリとするだろう。あなたは、お分かりになっただろうか。

左巻健男(さまき・たけお)

東京大学非常勤講師
元法政大学生命科学部環境応用化学科教授
『理科の探検(RikaTan)』編集長。専門は理科教育、科学コミュニケーション。一九四九年生まれ。千葉大学教育学部理科専攻(物理化学研究室)を卒業後、東京学芸大学大学院教育学研究科理科教育専攻(物理化学講座)を修了。中学校理科教科書(新しい科学)編集委員・執筆者。大学で教鞭を執りつつ、精力的に理科教室や講演会の講師を務める。おもな著書に、『面白くて眠れなくなる化学』(PHP)、『よくわかる元素図鑑』(田中陵二氏との共著、PHP)、『新しい高校化学の教科書』(講談社ブルーバックス)などがある。