2050年カーボンニュートラル目標は
自動車業界も全力でチャレンジ

「まず、菅政権が掲げた2050年カーボンニュートラル目標の実現は、国際公約であり、困難ではあるがわが国を挙げて取り組んでいかなければならない大変重要な課題です。

 自動車業界として二つの方向を定めて全力でチャレンジしていきます。一つは、カーボンニュートラルを目指して電動化に全力を挙げること。もう一つは、エネルギー生成から車両の生産・廃棄までの一連の流れの中で総合的にCO2削減に取り組む必要があります。

 これからのクルマはCO2フリーで走るだけでなく、生産・製造から走った末のクルマのライフサイクル全域に至るまでCO2フリーにしていかねばならない。カーボンニュートラルはエネルギー政策そのもので、使用電力のみならず熱源としてのエネルギー対応も求められます。

 海外の場合、特に欧州は水力発電や原子力発電など電源政策と企業活動が官民ともに一致しています。対して日本は火力発電に依存し、これではカーボンニュートラルが実現できません。

 自動車業界としてはエネルギー選択の取り組みを積極的に進めていきます。『政府と自動車業界が対立している』との一部報道もありますが、われわれはむしろ全力で挑戦していきます。

 日本政府の新たなエネルギー政策に期待を寄せています」

必ずしも「二者択一」ではない
ゼロ・エミッション車

 内山田トヨタ会長は、2017年から自動車業界の生産・販売・運輸・サービスの各分野の団体会員・企業会員170団体を束ねる「日本自動車会議所会長」を務めており、さらに昨年2020年12月に、産業セクターを超えて水素社会実現を目指す「水素バリューチェーン推進協議会共同代表」に就いている。

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「クルマの電動化について、最終的に目指しているのはカーボンニュートラルなので、ゼロ・エミッション車としては、BEV(バッテリーEVあるいはピュアEVともバッテリー電力だけでモーター駆動)か、FCV(燃料電池車・水素と酸素で発電しモーター駆動)の『二者択一か』と言われますが、そういうことではないでしょう。

 BEVとFCVともに技術的な課題や社会インフラの整備に加え、消費者サイドからの利便性をどう生かしていくか、ということになります。

 車両の電動化は、HV(ハイブリッド車・エンジンとモーター2つの動力で走る)、PHV(プラグインハイブリッド車・外部電源からの充電可能なHV)、BEV、FCVなどのさまざまな手段があります。

 また、ブラジルでは植物から採るエタノールを主力燃料にしようとする動きもあります。バイオ燃料によるカーボンニュートラル。これも一つの手段でしょう。

 対してEVでは、北欧のノルウェーが今やEV大国になっています。ノルウェーは80%以上の水力発電を配しており、すでにBEV販売が全体の50%以上を占めています。また、電気を他国に輸出するほど、自然由来のエネルギーが豊富なのです」