わずか入社4日目で配属
優秀なプロ人材が育つ理由

 P&Gでは、ヘッドハンティングなどを通して多くの人材を集めるのではなく、新入社員を採用し、徹底的にプロフェッショナルへ育て上げることを人材戦略のベースにしている。

 同社では新入社員が入社すると、入社1日目から早速、専門性を構築するための研修が始まる。マーケティング、ファイナンス、セールス、人事など、それぞれの部門で貢献するための集中的なトレーニングだ。その他、冒頭で紹介したダイバーシティ&インクルージョンを含む企業文化や理念、価値観、プロフェッショナルとしての心構えに関する研修、リーダーとの顔合わせなどを3日間かけて行う。

 そして驚くことに、わずか入社4日目には現場に配属される。同社ではマーケティングなどのプロ人材をたくさん輩出していることでも知られているが、なぜ社員の専門性を重視しながらも、研修は短期間で済ませ、すぐに現場へ配属するのだろうか。

「私たちがラーニングモデルとしているのが『70:20:10の法則』、つまり新入社員の成長に役立つ要素は、OJT(職場内での訓練)が70%、周囲(上司・メンター・同僚など)からの学びが20%、そして研修や書籍などよるものは10%という考え方だ。当社では、この配分こそ、新入社員が学ぶために最も適切だと考えている」(デロスサントス氏)

 その後も18カ月にわたって定期的に研修は行われるものの、その頻度は1カ月に1回や2回ほど。新入社員にとって最も効果があるタイミングを見計らって実施しているという。

「例えば、『効果的なビジネスライティング』といった研修は、受講するタイミングが早すぎれば十分に活用できずに終わる可能性もある。得られる内容が生かせるように、研修を適切に設計するのも私たちの仕事だ」(デロスサントス氏)