マネジャー選考で覚えておくべきこと

 まったく欠点がない人間はいない。いずれ欠点が明らかになるのなら、早いうちにその欠点がわかったほうがいい。マネジャーの場合は特にそうだ。したがって、マネジャーを選ぶときは、強みと同じぐらい欠点にも注目したほうがいい。

 しかし現実には、長所にばかり注目して人選がおこなわれることが多い。「サリーは人脈づくりの達人だ」「ジョーは壮大なビジョンをもっている」といった具合に、一つの長所だけを理由に選ばれることすらある。前任者が人脈づくりの稚拙さや戦略ビジョンの欠如でつまずいた場合は、とりわけこの傾向が強まる。

 誰かの欠点を知る方法は、2つしかない。その人と結婚するか、その人の下で働くかだ。しかし、マネジャーを選考する人たち――CEOを選ぶ取締役や、自分の部下として働くマネジャーを選ぶ上司(それにしても「上司」「部下」というのはぞっとする言葉だ)――の中に、(結婚まで求めるつもりはないが)その候補者の下で働いた経験がある人がどれだけいるだろう。そんな人はほとんどいない。その結果、上には愛想よく振る舞い、下には威張り散らすような人間がマネジャーに選ばれることが多い。この種の人間は、自信ありげで弁が立ち、「上司」に好印象を与えるのは得意でも、「部下」をマネジメントするときはひどい態度を取る。

 マネジャーを選ぶときは、候補者を最もよく知っている人たちの話を聞くべきだ。とはいっても、その人物の配偶者に話を聞いても役に立たない。現在の配偶者はその人をよく言うに決まっているし、過去の配偶者は悪く言うに決まっている。しかし、候補者にマネジメントされた経験がある人たちの話なら聞けるはずだ。

 私は、マネジメントに「魔法の特効薬」があるとは思わない。それでも、マネジメントのあり方を大きく改善するための処方箋があるとすれば、それは「マネジャーの選考では、候補者にマネジメントされた経験のある人たちの声を聞け」というものだ。この点をじっくり考えてみて欲しい。

(※この原稿は書籍『これからのマネジャーが大切にすべきこと』の「4.マネジャーは欠点を見て選べ?」の一部を編集して掲載しています)