対応を誤れば容易に淘汰されるウィズコロナの時代、経営者は企業をどうかじ取りすべきなのか。特集『総予測2021』(全79回)の#63では、伝統的な経営論やMBA型教育に異を唱える異色の経営学者で、故ピーター・ドラッカー氏と並び称される経営学の巨匠、ミンツバーグ氏のインタビューを掲載。同氏は、かつてと比べ世界で存在感を失った日本企業について「新たな起業家精神の波を必要としている」との見方を示す。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
社会のバランスを取り戻さなければ
世界はいずれ終焉を迎えてしまう
――世界中の企業がコロナ禍に苦しむ中、経営思想家として、今後の経済・社会のトレンドをどのように見通していますか。
楽観主義者は自らが好むものを予測し、悲観主義者は嫌いなものを予測する傾向にあると思いますが、誰もそれを正しく行えません。
(IBM創業者の)トーマス・ワトソン氏は最初のコンピューターが製造された際、「こんなもの世界に5台以上の需要はないだろう」と語った逸話があります。また(元英国首相)ウィンストン・チャーチル氏はかつて「原子力エネルギーが爆弾を作ることは決してないだろう」と考えました。
聡明な人たちでさえ、未来を予測できないわけです。ですが、早い段階でトレンドをつかむことは重要だと思います。そこで一つ期待したいのは、われわれの社会がバランスを取り戻すことです。
私が著書『Rebalancing Society(邦題:私たちはどこまで資本主義に従うのか)』で述べたポイントは、社会には政府セクター、民間セクターだけでなく(社会運動や社会事業などのコミュニティー的な活動から成る)多元的なセクターがあることでした。
私たちが今、このまま歩みを続ければ、世界はいずれ終焉を迎えてしまいます。気候変動の話だけではありません。戦争や災害に加え、非常に多くの民主主義国が民主主義をやめるに至りました。
世界では独裁的な支配者たちが、国家を乗っ取る傾向が見られます。ブラジルやトルコ、エジプト、トランプ大統領の下の米国などです。そんな状態を避けるために世界がするべきことは、政府と民間、そして多元セクターのバランスを取り戻すことだと考えます。
――そうした考えに、コロナ禍はどんな影響をもたらしましたか。