あれだけの打率成績を残したイチローさんが、なぜ「打率」を目標にしなかったのかというと、もしも、最終打席のときの打率がちょうど4割だったら、バッターボックスに立ちたくなくなるからです。その打席でヒットが出なかったら、打率が4割を切ってしまうのですから、誰だって、そんなリスクは冒したくないでしょう。

 だから、イチローさんは、「打率ではなく、ヒットを一本増やしたいと考える」ようにしていたそうです。

 たしかに、バッターボックスに立たなければ「安打数」は増えませんから、「打席数」が多ければ多いほうがよいということになります。そして、イチローさんは「次の目標は、次のヒットです」という言葉も残しています。つまり、バッターボックスに立ち続けて、一打席一打席を大切にし続けることで、あれだけの偉業を成し遂げたということです。

「自分の弱さ」を認めてあげるから、
人は強くなれる

 このイチロー選手の思考法に、僕は強い影響を受けました。 というか、あのイチロー選手ですら、打席に立つことに恐怖を感じることがあったということに救われる思いがしました。圧倒的な成績を残した天才打者ですら「打席に立つ」のが怖いのだから、平凡な営業マンである僕が「打席に立つ(お客様にアプローチする)」のが怖くなるのは当たり前だと思えたからです。

 しかも、営業マンは“打率”を問われません。

 10人のお客様にアプローチして3つのご契約をお預かりするほうが、30人にアプローチして5つの契約をお預かりするよりも、よほど“打率”はいいですが、営業マンとして評価されるのは5つの契約をお預かりした方です。

 だったら、“打率”なんか気にせず、とにかく“打席数”を増やしたほうがいい。イチロー選手のように「ヒットを一本増やしたい」と前向きに考えて、“打席”に立ち続ければいい。僕は、そうやって自分の弱い気持ちを励まし続けたのです。

 僕は、多分、プルデンシャル生命保険で、誰よりも多くのお客様にアプローチをし続けて、誰よりも多くのお客様に断られてきたと思います。

 だからこそ、結果も出せたのですが、それができたのは、「ポジティブ・シンキング」で自分の本心をごまかすのではなく、自分の弱さを認めたうえで、自分に「やるか? やらないか?」と選択を迫ったからだと思っています。自分の弱さを認めてあげるからこそ、人は強くなれるのです。そして、イチロー選手の言葉は、そんな僕たちを励ましてくれているのです(詳しくは、『超★営業思考』に書いてありますので、ぜひお読みください)。