『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』では、どんなチームや企業にも存在する「組織文化」をテーマに、それを知り、変え、そして進化させていくための方法を紹介しています。なぜいま「組織文化」が重要なのか。本連載では本書第一章に収録した原稿を特別公開中です(「日本企業が世界で勝つには「らしさ」が最大の武器になる」「「システム思考」を生かして組織文化を理解しよう」「成果を出したいなら「オフ・ザ・フィールド」に目を向けよう」「コロナ禍が残酷に暴いた!「組織文化」の強い会社と弱い会社」)。今回はこれから先、企業は組織文化によって選ばれるという私の考えをお伝えします。

給料でも待遇でもない! これからの企業は組織文化で選ばれるPhoto:AdobeStock

 前回の記事では、コロナ禍が企業を大きく揺さぶったとお伝えしました(詳細は「コロナ禍が残酷に暴いた!「組織文化」の強い会社と弱い会社」)。それと同じように、コロナ禍は、私たち一人ひとりの価値観も揺さぶりました。これから先の生き方に思いをめぐらせた人も多いのではないでしょうか。

 この先、多少の違和感やつらさに耐えても同じ場所で働き続ければ、会社が一生守ってくれるという時代はもう終わりました。

 これからは、一人ひとりがどうありたいのかを考え、生き方や働き方を選ぶ時代です。成長を求めるのか、フラットな人間関係を重視するのか。厳しい環境の中で自分を鍛えるのか、それよりも私生活の充実に重点を置くのか。

「本当に働きたい会社はどこか」と改めて自問した人もいるでしょう。会社を選ぶ条件は年収や勤務地、福利厚生、雇用形態といった目に見える条件ばかりではなくなっているはずです。

 居心地が良い、自由度が高い、成長できる、人間関係が良好……。

 さまざまな要素の中で大切だと思うものを、個人が自分の価値観に沿って選ばなくてはなりません。何が良いか悪いかではなく、自分の価値観とフィットする組織文化の中で働きたいという考え方は、これからさらに強まっていくはずです。

 このとき、企業側に独自の組織文化がなければ、もはや選ばれなくなってしまいます。

 また、これからは誰もが企業に属するような時代ではなくなります。職務内容を明確にして成果で処遇するジョブ型雇用が広がれば、ますます人材の流動化が進むでしょう。

 企業に所属するのか所属しないのか、所属するならどこにいたいのか。雇用形態が変わり、副業が当たり前になり、さまざまな組織で働く人が増えると、私たちは一層「どこで働きたいか」を真剣に考えるようになるでしょう。

「自分の価値観と合う組織文化を持った企業はどこか」
「どのような組織文化の中で働くと自分らしく振る舞えるのか」
「どのような組織文化なら自分のパフォーマンスを最大化できるか」

 企業はより優れた人材を採用するためにも、自分たちの組織文化を明確に示し、それが唯一無二の個性であることを対外的に伝えていかなくてはなりません。

 能力やスキルといった表面上のスペックではなく、組織の持つ哲学や価値観に共鳴できるかという一段深い部分で一緒に働く仲間を選ぶようになる時代が到来しつつあるのです。