海外では寒波と電力危機で死者も
発電設備への投資も困難な環境に

 これまで、電力システム改革の議論の場面では、旧一般電気事業者が安定供給の必要性を訴えるのに対し、「安定供給を盾に、電力システム改革の足を引っ張っている」などの批判を浴びせられてきた。

 しかしながら、電気事業は国民の生命・生活に直結すること、高度情報化社会を迎えた今日では停電の経済損失が天文学的な金額となる可能性が高いことから、安定供給の大前提の下で行われる政策であるとの認識が必要ではないだろうか。

 加えて日本は、周囲を海に囲まれたエネルギー輸入国である。新電力を含め、電気事業に関わる全ての事業者は、国家安全保障の一翼を担っているとの自覚が必要だ。

 新電力各社も、そう促される出来事があった。今年1月に発生した「電力需給逼迫(ひっぱく)危機」だ。

 20年12月中旬からの厳しい冷え込みによって電力需要が急増し、予想を上回るペースで火力発電所の燃料であるLNG(液化天然ガス)が消費され、在庫不足となった。エネルギー輸入国である日本は、すぐにLNGを調達することができず、今年1月には電力需給が逼迫した。

 気候変動や災害が電力の安定供給を大きく脅かすケースは、これまでにもあった。18年9月の北海道胆振東部地震では、電力供給力の喪失によるブラックアウト(大規模停電)が発生。19年9月の台風15号では、千葉県で送電線の倒壊などでやはり大規模停電が起きた。

 そして今年は海外でも、米国カリフォルニア州での計画停電、テキサス州での電力危機、さらには欧州における需給逼迫などの事態が相次いだ。

 とりわけテキサス州では、現地報道によると、歴史的な寒波で70名以上の死者が出ており、うち数名の死因は室内での低体温症など停電に起因するものであった。国民の生命を危険にさらしてまで経済合理性を突き詰めることが、国家において合理的な選択と言えるのか、いま一度よく考え直す必要がある。

 国内での今冬の需給逼迫に話を戻せば、これにより、新電力が電力の調達手段として頼る日本卸電力取引所(JEPX)の価格が高騰した。JEPXに電力調達を大きく依存し、従来、安値で電力を購入して来た新電力は、逆ざやになって大きな経営ダメージを被った。

 今回の電力需給逼迫の背景には、電力システム改革の負の側面があったといえよう。

 電力小売りの全面自由化に合わせて、JEPXに余剰電力を卸す旧一般電気事業者には、限界費用ベースで電力を卸すよう求められていた。これにより、市場価格は低下し、新電力が手軽に参入できる構造を作り出した。その一方で旧一般電気事業者は、電源固定費(発電設備などの建設や保有にかかるコスト)の回収が難しい事業環境に追い込まれた。

 こうした仕組みは、新電力が自力で電源固定費を回収できていない現実を認識しないうえ、電源固定費を値引きの原資に充てられるという誤った認識を新電力に与えてしまった可能性がある。