接待で、ドコモ完全子会社化の政策決定プロセスが歪められた?

 ところで、総務省に対して接待が横行していたという事実ばかりに目が向きがちですが、もう一つ考えるべき大事な問題があります。それは、接待によって行政が歪められた可能性はないのか、という問題です。

 野党は、東北新社による接待について、菅首相の息子が絡んでいるので行政が歪められたと主張していましたが、私は個人的に、もしかしたらNTTによる接待の方がこの点についてより深刻な可能性もあるのではないかと思っています。

 というのも、メディアや評論家はNTTによる接待を菅首相の肝いり政策である携帯電話料金引き下げとリンクさせたがります。ですが、それならばNTT持ち株会社の澤田純社長よりも、ドコモの社長の方が接待に出てくるはずです。

 しかし、18年6月に澤田氏がNTT持ち株会社の社長に就任して以来、少なくとも現段階で発覚している谷脇氏や総務大臣などへの接待は、基本的にすべて澤田氏が行ってきました(1回だけは持ち株会社の前社長の鵜浦氏が谷脇氏を接待)。ドコモの社長は接待に一度も登場していません。

 その一方で、20年9月に澤田氏が突如ドコモの完全子会社化(NTT再々編)を発表し、かつ報道によればその半年前の4月の段階で澤田氏はドコモ完全子会社化の方針を固めていたようです。

 それらの事実を考え合わせると、これは私のまったく個人的な邪推に過ぎませんが、もしかしたら澤田氏は、接待を通じて谷脇氏を中心に政治家を含む旧郵政省の意思決定のキーパーソンとNTT再々編について話し合い、内々の承諾を得ていたのではないでしょうか。

 もし万一それが事実だった場合、接待を通じて政策決定プロセスが歪められるという大変なことが起きていたと言わざるを得ません。

 85年に旧日本電電公社が民営化された後、90年代にNTTが東日本と西日本など今の形に分社化される際には、旧郵政省の審議会という表の場で約1年かけて徹底的な議論が行われました。NTTの組織形態が市場の競争に与える影響が非常に大きかったためです。

 その当時と比べると今は、ドコモは他社に携帯市場のシェアを奪われ、有線通信の衰退からNTT東西の収益も悪化しており、市場環境は当時から大きく変わりました。しかしそれでも、NTTがドコモを完全子会社化すれば、無線と通信、さらにはNTTの技術力が完全に一体となったビジネス展開が可能となるので、競争環境には大きな影響があるはずです。

 もちろん、ドコモが上場企業であることを考えると、表の場でNTT再々編を堂々と議論するのが難しいのは事実です。それでも、少なくとも旧郵政省はこれまで情報通信政策について“公正競争の確保”を最重要課題としてきました。

 ですから、例えば市場環境が大きく変化する中での公正競争のあり方を公の場で議論するなど、仮に抽象的であっても、他の通信事業者にも公明正大な形で政策転換の方向性、さらにはNTT再々編を許容することを匂わせることもできたはずです。