空前のグリーンバブルである。世界的な金余りと主要国の環境関連産業への補助金バラマキで、巨額マネーがEV関連企業にも流入している。そうした中、新興企業が「非・伝統的な」方法で巨額の資金を調達したり、旧来の自動車メーカーがベンチャー投資を通じて資金・技術を獲得したりと、多種多様な「業績底上げ・資金調達」手段を駆使し始めている。賢い方法で次世代技術の育成に必要な原資を得ることも、EVシフトの乱世を生き抜くには有効な手段になりつつあるのだ。特集『EV・電池・半導体 脱炭素の最強カード』(全13回)の#12では、海外企業が活用する“飛び道具”について解説する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)
巨額IPOに補助金バラマキ
海外勢が狙うゲームチェンジ
「欧米系の電気自動車(EV)メーカーや電池メーカーは、資金調達のスケールや企業の戦い方が全く違う。日本のメーカーも見習わないと勝負にすらならない」。あるEVベンチャーの社員は、そう危機感をあらわにする。
世界はまさにグリーンバブルの様相を呈している。未曽有の金融緩和と財政出動によって行き場を失った金が、環境関連投資に押し寄せているのだ。ゲームチェンジを狙った米中欧などの主要国・地域は、自国産業の競争力を高めるために環境分野へ莫大な補助金を投下している。
もはや状況はグローバルな「グリーン経済戦争」と言っていい。戦争なのだから、正しく愚直である方が勝つとは限らない。主要国・地域は自陣に有利になるように競争のルールを変えようと、「ルール・メーキング」に躍起になっている。
その一例が、資金調達手段の多様化である。巨額の環境関連マネーを背景に、EV市場かいわいでは、多種多様な「技」でゲームチェンジを目論むプレーヤーが台頭してきているのだ。
それでは、海外勢が駆使する資金調達の「飛び道具」とはどのようなものなのか。