脱炭素の最強カード#5
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「軽自動車の父」として知られる鈴木修・スズキ会長が会長職を退く。同時に公開した新たな中期経営計画では「軽自動車EV」の開発を掲げているが、その内実はかなり厳しい。これまで小さくてリーズナブルな車で勝負してきたスズキだが、「軽自動車EV」はEV市場の中でも最も攻略が難しいカテゴリーだからだ。EVシフト後の世界で、スズキは競争力を発揮できるのか。特集『EV・電池・半導体 脱炭素の最強カード』(全13回)の#5では、その情勢を占う。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

ついに鈴木修会長が“卒業”
後ろ盾を失った軽自動車の行く末は?

 軽自動車の父、鈴木修・スズキ会長がついに経営の第一線を退く――。

 2月24日、スズキは2026年までの新しい中期経営計画の発表と同時に、修会長の退任を発表した。今後、経営のかじ取りは、名実ともに長男である鈴木俊宏・スズキ社長が担うことになる。

 中期経営計画の目玉となったのが、世界的なカーボンニュートラル(炭素中立。二酸化炭素の排出量をプラスマイナスゼロにする)の動きを背景とする電動化への目標だ。25年までに電動化技術を整え、30年までに電動化技術を製品に全面展開することを掲げている。そのためにつぎ込む研究開発費は、5カ年で1兆円とスズキにとっては決して小さくない金額だ。

 ある国土交通省関係者は「それまで電動化対策に及び腰だったスズキが、25年までに電動化技術を整えるという年数目標を明言したことは評価できる」と口にする。

 だが、スズキを待ち受ける道のりは険しい。得意とする軽自動車に、電動化という高い壁が立ちはだかっている。今回の中計で、電気自動車(EV)など電動車の投入計画に具体性が乏しかったのも、そうした厳しい事情があるからだ。

 庶民の味方である軽自動車は絶対に存続させる――。それが持論だった修会長。その大きな後ろ盾を失った軽自動車に、大きな試練が訪れている。

 そもそも、軽自動車の電動化が迫られている背景には、ある切実な事情がある。世界的なグリーンシフトや、菅政権がぶち上げる、35年までに新車販売を100%電動車にするという方針だけが“後押し”の理由ではない。