年功序列は一切なし!
現在の役割と成果で等級・報酬が決定

 近年は徐々に崩れつつあるものの、日本企業に根深く残る年功序列制度。「なぜあの全く働かない上司が、自分より高い給料をもらっているのか」といった不満を、いまだ多くの日本企業で働く社員が持っていることだろう。

 それに対してソニーでは、2015年度から年次によらず、「現在の役割(ジョブ)」に応じて等級が定義される「ジョブグレード制度」を開始した。

 等級は、基本の等級群にあたる「インディビジュアルコントリビューター等級群(I)」と「マネジメント等級群(M)」に分かれている。I等級群は1から9まで設定されており、グレードは数字が大きいほど上位になる。

 I6からは高度専門家やプロジェクトマネジャー、I9は業界レベルの専門家や社内技術リーダーというグレードに相当する。同社はエンジニア中心の会社でもあるため、マネジメントの道だけでなく、高度な専門性を生かしたキャリアを構築することも可能だ。

 また、その時の役割が変動すればグレードも変わり、I等級群とM等級群を行き来することもできるという。

「実際に、20代でM等級群の『統括課長』という立場になっている社員もおり、年上の部下がいるのもよくあること。新入社員については一般的には入社2年目の7月にI等級群3の『担当者』というグレードが付くが、優秀な人材は配属先での研修が一段落する入社3カ月でそのグレードが付くケースもある」(陰山統括課長)

 では、報酬についてはどのように決められるのか。これも、個人の成果に応じて支給額がダイナミックに変動する仕組みになっている。まずベース給については、等級によって異なり、その水準は、大企業50社を調査することで適正な水準を決めている。

 年2回支払われるボーナスのうち、12月支給分はジョブグレードごとに金額が決まっている固定給的なもの。その一方で、大きな差が生まれるのが6月支給分ボーナスの算定だ。これは、個人の実績とソニーの業績、事業会社の業績によって変動するものだという。

 この個人の実績を反映すると、賞与額は2020年度のジョブグレードがI4(上級担当者)のケースで、最高が330万円、最低は93万円となり、約240万円の差が生まれる形になったという。

 働きがいを感じる上でも「報酬の適正感」は重要だが、同社では役割や実績に応じた給与が支払われるため、常に成果を出さなければならないプレッシャーはあるものの、納得感のある報酬体系といえるだろう。