「当社で働いていれば、部署に1人や2人は社内募集制度で異動してきた人がいる。それくらい当たり前の制度だ。社員個人が成長するにあたってのキャリアの選択肢を広げるもので、『選び合い、応え合う関係性』という人事理念にも沿っている制度だと考えている」(陰山統括課長)
また同社は、社員の成長ややりたいことを促進する場も設けている。いくつも場はあるが、一つの例がソニーミュージックグループの新規事業創出プログラム「Enter Lab.」だ。社員が将来の目標としている夢やひそかに練っているビジネスアイデアを会社がサポートしてビジネス化するもので、なんとあの大ヒットしている2人組の音楽ユニット「YOASOBI」はここから誕生したという。
社員同士が交流し、学び合える場も設けられている。「PORT(ポート)」と呼ばれる場で、多様な社員が主体的に参加型セミナーを企画し、主催するというものだ。これまでは品川本社にあるPORTで行われてきたが、コロナ禍で集まることが難しいため、今ではオンラインで開催されている。例えば、「2050年のキャリア」についてや、話題の書籍「シン・ニホン」を取り上げた講座など、多岐にわたるそうだ。
仕事もある中でどんな社員がセミナーを企画するのかを陰山統括課長に尋ねると、「人事が募集を始めると、やりたいという人が殺到する」ほど、さまざまな社員が応募してくるという。積極的な人が多いのも同社の魅力なのだろう。
オープンなコミュニケーションと
手触り感のある成果がカギ?
ここまで制度面を中心に紹介してきたが、ソニー社員が働きがいを感じる理由について陰山統括課長は「『オープンなコミュニケーション』と『手触り感のある成果』があるからではないか」と表現する。
多様な社員が多様性を認め合いながら働けるオープンな環境で、実力によって適正に評価され、報酬に跳ね返る。ソニーという大企業で働く中で、自らが関わる製品が世に出ることで感じられる働きがいもあるだろうが、やはり企業理念や文化、それに基づく人事制度や働く環境は、社員の働きがいに欠かせない要素といえそうだ。