すべての事業は
四つの「型」に分類できる
なるほどなるほど、これはいい話を聞いたぞ、What kind of business are you in? かと。これだな、と私は思いました。これなら、業界経験がどれだけ豊富な経営者が相手でも、そして英語が下手な私の話でも、聞いてくれるかもしれないと感じたのです。
そこから、私の経営コンサルタント人生が多少開けてきました。若くしてパートナーになれたのも、この「事業を突き放して抽象化する」という考え方を、過酷な状況で身体にたたき込まざるを得なかったからではないかと思います。
さて、事業のさまざまな具象を抽象化・パターン化すれば戦えるとして、そのことを知っただけではハタと困ります。世の中には、事業の数は山ほどあります。何万種類とあるのではないでしょうか。でも個別具体論では戦えない。抽象化しなければならないわけです。山ほどある事業をうまく抽象化・パターン化するやり方はないか、パッと分類できるような都合の良いアプローチはないものか……。
そこで出てくるのが「事業経済性」というフレームワークです。そして、これを理解する第一ステップは、世の中に事業は星の数ほどあれど、「儲けの出方」には四つの「型」しかない、と理解することです。
戦略コンサルタントという職業は、クライアントの儲けをどうやって増やすかを考える職業ですから、星の数ほどある事業を「儲けの出方」で分類できるということは、誠に都合が良いのです。業界素人でなければならない戦略コンサルタントが、なぜ高額のフィーをもらえるのかという秘密が、このフレームワークから垣間見えてきます。
売上なのか資産規模なのかは別として、横軸に規模を置いて縦軸に収益性(利益率)を置くと、世の中の事業は自動的に四つに分かれます(図表1)。別の言い方をすると、その事業には差別化の要素がたくさんあるのか少ないのか、そして規模の大きさと優位性の間に関係があるか(「規模の経済」が効くかどうか)という二つの判断軸で分けるのです。
これはボストン・コンサルティング・グループがずいぶん昔に開発した、「アドバンテージ・マトリックス」というフレームワークです。あまたある事業を「儲けの構造」という視点でシンプルに抽象化・パターン化するこの便利な道具は、不思議なことに世の中にあんまり喧伝されていません。
「どうやったら、この事業は儲かるのか」という事業戦略を考える上でも、そして少なくとも業界標準並みの収益性を出すことで「みなで豊かになる経営」を目指す経営者にとっても、最も基礎になる入り口の考え方なのだと思うのですが、あまり普及していないようなのです。
(本原稿は『経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営』の内容を抜粋・編集したものです)