一方で、あまりに数多くの家電ブランドが併存することで、各社の競争は激しく、収益性を悪化させた面もある。現在のように、それぞれのメーカーがそれぞれの得意分野で戦うような個性を出し始めたのは、よい傾向と言える。

 しかし、パナソニックやシャープといった、総合家電メーカーが全く不必要になったわけではない。グローバルな市場を見れば、LGやサムスンといった総合家電ブランドを全世界に展開している企業もあるし、中国の美的集団などはそれに追いつこうとしている。また、洗濯機のハイアール、テレビのTCLといった、得意な家電製品に特化した中国企業の伸長も著しい。

パナソニックの「二番手商法」を
韓国企業が真似て気炎を上げている

 こうした世界の家電市場の中で、総合家電ブランドとしての日本メーカーは不戦敗を続けている。商品力がない、ということではないと思う。そもそも、総合家電メーカーとしてのラインナップをほとんど海外で展開していないことが問題である。

 パナソニックであれば、同社が注力している中国やインドでは、総合メーカーとしての商品ラインナップを日本国内同様に揃えているが、日本市場同様に高付加価値製品に感度の高い欧米市場での存在感は薄い。何より残念なのは、かつてパナソニックが「二番手商法」と言われていたやり方を、規模を大きくしてサムスンやLGが行っていることだ。

 パナソニックは、創業者の松下幸之助氏が健在のときに、「うち(松下電器)は東京にソニーという研究所がある」と言って、ソニーが初めて商品化した製品を後追いで発売し、より大きな市場を取るという戦略を示していた。

 経営学で言うところの「2nd mover advantage」である。これは単なるものまねではなく、先行者が開発した製品を徹底的に研究し、先行者が先行者であるが故に見逃した製品の問題点や消費者の不満な点を満を持して解決し、より満足度の高い製品を上市するというやり方であり、製品開発力に自信がなければ二番手商法はできない。

 その二番手商法が得意だったパナソニックが、今日ではかつてのソニーのようにアイデアを提供する側に回り、韓国メーカーが全世界に規模を拡大して、市場を席巻する構図が続いているのが現状である。