上司からは目標達成しろとプレッシャーをかけられ、部下たちからは会社の愚痴を吐かれる……つねに板挟み状態の中間管理職ですが、ストレスを「ため込む人」と「ため込まない人」の差はいったいどこにあるのでしょうか。
多くのビジネスパーソンが持つメンタルの悩みを解決してくれる『刑事メンタル』の著者であり、刑事生活20年の森透匡さんは、修羅場という修羅場を潜り抜け、ときに捜査本部100人のチームを束ねてきた元ベテラン警部。自身も中間管理職としてプレッシャーが大きい立場にいたといいますが、効果的なストレスコントロール術で乗り切ったそうです。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)
刑事100人を束ねた管理職時代に見つけた
ストレスを溜めない習慣
──森さんは警察に27年在籍、23歳という若さで巡査部長に昇格、そして同期生トップの35歳で警部に昇任されたと伺いました。ただでさえプレッシャーの強い刑事のお仕事なのに、さらにリーダーとして組織を束ねていくとなると、かなりのストレスなのではないでしょうか?
森 透匡(以下、森):10年ほど警部として働いていましたが、やっぱりストレスはありますよ。警部って、中間管理職なんですよね。じつは検挙件数、検挙率、事件の抑制件数など、ノルマがあるんです。警察の仕事はすべて数値目標で管理されていて、私も当時は本部の監察からノルマを定期的に精査されていました。
──上からはノルマのプレッシャーがあり、さらに部下の成長も促し……となると、考えることがたくさんありますよね。何人くらいのチームを束ねていたんですか?
森:ケースによるのですが、多いときは捜査本部100人をまとめなければならないこともありました。
──100人! 大変ですね!
森:しかも、刑事って個性が強い人ばっかりなんです。「おれさまは刑事だぜ!」みたいなね。なので、部下は生意気で言うことを聞かないし、上からはノルマ達成しろとプレッシャーをかけられ、やっぱりストレスはたまりました。
ただ、そういう経験を続けているうちに、ストレスをためないためにコントロールするべき習慣って、三つしかないってことがわかったんです。
一般社団法人日本刑事技術協会 代表理事 元刑事の人事コンサルタント。警察在籍27年のうち、刑事生活は20年。23歳で巡査部長に昇任し、知能経済犯担当刑事に抜擢。異例のスピードで同期生トップとなる35歳で警部に昇任。多数の凶悪事件、巨悪事件の捜査に従事し、冷静沈着な判断と指揮により事件解決に貢献した元敏腕刑事。また、東日本大震災では広域緊急援助隊の中隊長として福島県に派遣され、福島第一原子力発電所の水素爆発に遭遇しつつも命の危険を顧みず部隊の指揮を執った経験もある。心が折れそうな数々の現場経験から強靭な精神力を培う。現在は大手企業、経営者団体など毎年全国180ヵ所以上で講演・企業研修を行い、これまで7万人以上が聴講した。2020年には大手講師派遣エージェントより全国1万人以上の講師の中から人気No.1講師に選出される。日本テレビ系「月曜から夜ふかし」、読売新聞、日経新聞などメディアへの出演、掲載も多数。
ストレスに耐える「器」を大きくするのではなく、
ストレスを発散する「蛇口」を大きくすればいい
──長年ご活躍され、結果も出し続けてきた森さんのストレスコントロール術、ぜひ伺いたいです!
森:そもそも大前提として、中間管理職でストレスを感じない人間っていないでしょう? 責任があるからプレッシャーを感じる役職だし、ストレスを減らそうとするのは難しい。ただ、人によってストレスの入る器の大きさは違う。大きい器の人もいれば、小さい器の人もいますよね。それで、多くの人はストレスコントロールをしようと思うと、その器自体を大きくしようと考えて「なんで自分はこんなにすぐにストレスがたまってしまうんだろう……」と落ち込んで、自分を責めてしまう。でも違うんですよ。その器を大きくしようとするのって難しい。
じゃあ、どうすればいいか。器を大きくするんじゃなくて、ストレスを排出する「蛇口」を大きくすればいいんです。そうすれば、いくら入ってきても出ていくでしょう? だから、ストレスをコントロールしようと思ったら、器ではなく「蛇口」を大きくするためにはどうしたらいいかを考えたほうがいい。ストレスがたまらない人は、ストレスの発散方法をきちんと持っているのです。