日本の匿名掲示板として圧倒的な存在感を誇った「2ちゃんねる」や動画サイト「ニコニコ動画」などを手掛けてきて、いまも英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人などを続ける、ひろゆき氏。
10万部を突破したベストセラー『1%の努力』では、その部分を掘り下げ、いかに彼が今の立ち位置を築き上げてきたのかを明らかに語った。
「努力はしてこなかったが、僕は食いっぱぐれているわけではない。
つまり、『1%の努力』はしてきたわけだ」
「世の中、努力信仰で蔓延している。それを企業のトップが平気で口にする。
ムダな努力は、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。
そんな思いから、この企画がはじまった」(本書内容より)
そう語るひろゆき氏。インターネットの恩恵を受け、ネットの世界にどっぷりと浸かってきた「ネット的な生き方」に迫る――(こちらは2020年4月2日付け記事を再構成したものです)
仕事へのプライドで損する人たち
僕のことを少しでも知っている人にとっては、僕はあまり働いているイメージはないかもしれない。
しかし、学生時代はたくさんのアルバイトをした。
ヒマすぎる時間の切り売りが主な目的だったが、それはそれで楽しむことができた。
ざっと挙げてみると、「コンビニ店員」「スーパーの総菜売り場」「ラーメン屋」「裏ビデオのチラシのポスティング」「携帯電話会社の電話応対」「塾講師」「掃除」「ピザの配達」「佐川急便」など、思い出せるだけで9つ以上のバイトをした。だいたいどれも1年くらいは続いた。
携帯会社の電話応対のバイトは印象的だった。
そこで学んだのは、「世の中には会話が成立しない人がいる」ということだ。
何人かに1人がクレーマーで、いきなり怒鳴ってくる人がいたり、こちらの言うことを理解できない人も多かった。
ランダムにいろいろな人と接する仕事は、早いうちにやっておいたほうがいいかもしれない。
「この人には、こういう対応をすればいい」ということを網羅的に学ぶことができる。
そうやって楽しんで仕事をしているうちに、バイト内で出世をした。
すると、まったく社員がいない環境を手に入れることができた。ゲームボーイでポケモンをしたり、ジャンプを読みながら、「はい、それは申し訳ございません」などと真面目なことを言っていた。
世の中、案外チョロいということをそこで学んだ。
会社なんてものは、一見ちゃんとしているイメージがあるが、中に入ってみると、そんなものだ。
「世の中はチョロいし、意外とちゃんと回っていく」
そう思えるだけで、ビジネスのハードルはぐんと下がるし、企業相手でも平常心を保つことができる。
「こんなつまらない仕事できるかよ」と最初から思ってしまうようなプライドの高い人は人生で損をする。なんでも楽しめて、少しナメてかかるくらいのほうがいい。
本当に「ゲーム感覚」で働く
もう1つ、「ピザの配達」についても述べておこう。
ピザの配達は、僕の地元の赤羽でやっていたので、最短でピザを届けることをゲーム感覚でやっていた。
普通だと1時間の平均で3件を回るところ、僕は平均6件で回ることができた。
とはいえ、人の2倍を働いたからといって、給料が2倍になるわけではない。
だから、1時間のうち30分は友達の家に寄ってゲームをしてから戻るということをしていた。
最小の努力、最短で結果を出すことを、当時から徹底していた。
先ほどは「世の中はチョロい」という話をしたが、人間なんて一皮むいたらそんなもんだ。ろくなもんじゃない。
ピザ屋のときはみんな勝手に商品のジュースを飲んでいたし、僕の友達は配達するバイクのガソリンを盗んだりしていた。
高校生なんて、いかに時給以上の得をするかしか考えない。
底辺バイトをやっておこう
バイトをしないまま新卒で企業に就職してしまうと、社会の部分を見ないまま終わってしまう。
世の中の大半の仕事は、高校生レベルでもできることが多いのにだ。
ホワイトカラーの仕事だって、高校生の学力でできる仕事ばかりなはずだ。
一度、自分の仕事について考えてみてほしい。
「これ、高校生でもできるんじゃない?」
そう自問自答してみよう。
同じ仕事でも、高卒か大卒かで給料が異なる。大卒で偉そうにやっている仕事でも、高校生にマニュアルを渡せばできることも多い。
机に座って簡単な事務仕事をしているだけなら、おそらく高校生にだってできる。
そうであるならば、この先、不景気が続いたら、真っ先に切られる仕事であることを覚悟するべきだ。
それに気づいているなら、「もっとレベルの高いことをやろう」と焦ったほうがいい。
もしくは、自分の今のポジションを守ることに全力になるべきかもしれない。
高校生が集まって回ってしまうような職場は、本当にクソ野郎ばっかりだった。
ただ、世の中の底辺レベルが見られてよかった。
これがもし、大卒の会社員として彼らを管理する立場から接点を持ったとしても意味がない。上司がいる前では、彼らはマジメにがんばっているフリをするからだ。
どうやって手を抜いて、どんなズルをしているかは、同じ立場で話してはくれない。
「こいつらダメだな」という状況をリアルに味わえるのは、たぶん学生時代だけだ。
この経験は、社会人になってしまうと体験しにくい。
僕の今の年齢で突然コンビニのバイトをはじめたとしても、高校生は仲間だと思ってくれないだろう。
僕は未知な部分をなくすことに喜びを感じる好奇心があるので、クソ仕事をやってよかったと心から思える。まあ、それが一生続くと地獄ではあるのだが。
本名:西村博之
1976年、神奈川県生まれ。東京都に移り、中央大学へと進学。在学中に、アメリカ・アーカンソー州に留学。1999年、インターネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」を開設し、管理人になる。2005年、株式会社ニワンゴの取締役管理人に就任し、「ニコニコ動画」を開始。2009年に「2ちゃんねる」の譲渡を発表。2015年、英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。2019年、「ペンギン村」をリリース。主な著書に、10万部を突破した『1%の努力』(ダイヤモンド社)がある。