それまでなかった
ヤマトの集荷・配送の仕組み
しかし、小倉さんというIdiosyncraticな経営者は、そんな常識的観察から、違う思考を紡いでいきます。
商業貨物の輸送は、たとえてみれば、一升枡のような大きな枡をもって工場に行き、豆を枡に一杯に盛り、枡ごと運ぶようなものである。一方、個人の宅配の荷物の輸送はというと、一面にぶちまけてある豆を、一粒一粒拾うことから始まる。拾わない限り、仕事は始まらない……。
どうすればそんなことができるだろう……そんな発想から私が思いついたのが、取次店の設置である。(pp.78-79)
小倉さんはそんなふうに考え、酒屋さんやお米屋さんといった主婦になじみのある商店を、一つひとつ取次店にしていきました。この取次店システムによって、バラバラに発生する荷物を集めるほうは仕組みができたのですが、今度は集めた荷物をどうやって輸送するか、どの程度の配送ネットワークの構築が必要なのかという難題に直面します。
そこで小倉さんが調べたのは、市民生活に関係の深い施設の数です。集配郵便局は5000、公立中学校は1万1250、警察署は1200と数えていき、地域の治安を維持している警察署が1200で済むのなら、ヤマト運輸の宅配センターもそのぐらいあれば間に合うと考えたのです。