2000年代後半から、失業者が減少しても、生活保護世帯が高止まりし続ける現象が起きている。低年金や無年金で生活が困難な高齢者だけでなく、シングルマザーでも障害者でもない「その他世帯」も増加していることがデータから分かる。08年のリーマンショックの傷痕を読み取ることができるのではないか。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)
失業者は減少、生活保護世帯は高止まり
景気が良くなれば失業者が減って、所得を得られない人が減少し、景気が悪くなれば所得を得られない人が増える。したがって、生活保護を受けている人の数は、景気が良くなれば減少し、景気が悪くなれば増加すると考えられる。しかし、近年、そうはいえない状況が現れている。
なお、現在、新型コロナウイルス感染症によって、景気が悪化しているのだが、悪化してからの生活保護全体のデータはまだ公表されていない。そこで景気が良かった時期までのデータで考えてみたい。
下の図1は、失業者数と生活保護世帯数を比べたものである。
図に見るように、2000年頃までは失業者が増えれば生活保護世帯が増加し、失業者が減れば生活保護世帯が減少するという関係があった。しかし、03年から、その関係が崩れている。03年から07年まで失業者が減少していたのに生活保護世帯が減少せず、増加の程度がやや緩やかになっただけだった。
その後、08年のリーマンショック時には、失業者数の増加とともに、生活保護世帯が急増した。12年からのアベノミクスの長期景気拡大を含む期間では、失業者数は順調に低下していったが、生活保護世帯数は増加していった。
さすがに、18年には生活保護世帯は微減したが、全体の動きは高止まりである。
なお91年から02年まで、失業者数は急増しているのに、生活保護世帯数は緩やかにしか増加していなかった。この無理が、リーマンショックの不況で一挙に顕在化したという解釈ができるかもしれない。