ブラケットハンドリング車の導入で
作業員は5人から3人に

 まずはブラケットとは何か、という説明からする必要があるだろう。ブラケットとは、電車に電気を送る架線を支えるために電柱に設置された三角形の金具のことで、架線は気温によって伸び縮みするため、電柱を軸に回転して、伸縮に対応できる構造になっている。

 このブラケット、単純な構造ではあるが1基当たり約60~100kgもの重量がある。JR西日本管内では年間2000基ものブラケットを交換しているというが、「架線や架線を支持するビームが支障となりクレーンを使った作業ができないので、作業員が滑車を使って手作業でつり上げ、はしごで電柱に登って設置しなければならなかった」という。そのため、1基当たり5人の作業員が必要だった。

 しかし、重量物を手作業でつり上げる作業は重労働であり、高所での作業は危険を伴う。そこで作業の効率化と省力化、そして安全性向上を実現するために開発されたのが、道路と線路の両方が走行可能なトラック(軌陸車)に産業用電動ロボットアームを設置したブラケットハンドリング車である。

 ブラケットハンドリング車の動作は、以下の通りである。まずロボットアームが3Dカメラにより自動で作業空間を認識し、障害物を回避しながら、交換対象のブラケット近くまで移動する。作業員はブラケットハンドリング車のリフトに乗って、ロボットアームにブラケットをつかませてから取り外す。すると、ロボットアームが自動でブラケットを回収する。

 次にロボットアームが自動で新しいブラケットを取り出し、設置位置近くまで運搬する。作業員が位置を修正し、ブラケットを電柱に設置する。これにより作業時間は約35分から約30分に、必要な作業員は5人から3人に削減されるという。

 木村氏は「障害物を避けてどういったルートで動かすかについては、何度も試行錯誤をして、かなり時間をかけて開発しました」と苦労を語るとともに、「5人作業を3人作業にできるということで、作業員を確保できにくくなっている中、人繰りに余裕が出て、労働環境の改善につながります」として省力化の効果に期待する。