なぜ、なぜと考え続ける

土井 なるほど。いや、深いですね。そう考えると、やっぱりビジネスパーソンには、抽象化する力って、すごい重要ですよね。

奥野 これが多分一番重要なんじゃないかな。でも、それをもう一度具体化できなければ、ビジネスパーソンじゃなくて大学の先生になってしまいます。

土井 あー、そうですね。具体化する力は何でしょう。やっぱり現実を見ることですかね。

奥野 それと失敗を恐れないことですね。

土井 あー、そうか。

奥野 絶対失敗しますから。この会社いけるんじゃないかと思っても、実際に調べてみたら全然違うことも起こる。いちいち失敗することに恐れない強さみたいなものが、多分ビジネスパーソンには必要なのかなと思います。

土井 なるほどね。抽象化する力はどうやったら身につきますかね。おすすめの本とかもしあればうれしいですけど。

奥野 そうですね。何だろう。実は、新聞と四季報でもいいと思っているんですよ。

土井 新聞と四季報?

奥野 変な話、新聞を読んで、この会社すごい儲かってるって情報が出たときに、四季報をパッと見て、この会社は何をつくっているんだろうと、そこから始める。そこで、なぜ、なぜ、とずっと考えること自体が抽象化だと思うんですね。それ自体が多分生きる抽象化だと思います。学問で言えば、フェルミ推定という考え方があるんですけど、大体の場合、面白かったというだけで終わってしまう。実際に使うというのは、毎日の新聞を読んで、そこに興味を持つということだと思います。

土井 なるほど。やっぱり好奇心ですよね。その会社が儲かっている理由とか伸びている理由とか人気がある理由の本質まで突き詰めて、なぜを問うということなんでしょうね、きっと。

ビジネスパーソンに必要な「抽象化する力」と「具体化する力」<br />奥野一成・土井英司スペシャル対談(3)
土井英司(どい・えいじ)
1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。在学中にギリシア留学。日経ホーム出版社(現・日経BP社)を経て、2000年にオンライン書店アマゾンの日本サイト立ち上げに参画。売れる本をいち早く見つける目利きと、斬新な販売手法で数々のべストセラーを仕掛け、「アマゾンのカリスマバイヤー」と呼ばれる。2001年、同社のカンパニーアワードを受賞。2004年有限会社エリエス・ブック・コンサルティングを設立。数多くの著者のブランディング、プロデュースを手掛け、著者の強み(USP)の発見からブランド構築、出版戦略、マーケティングまでをトータルで行う業界屈指のプロフェッショナル。また、日本を代表するビジネス書評家として自らのメールマガジン「ビジネスブックマラソン」は2004年7月に発行開始以来、5700号を突破。読者数5万6000人を超えるメディアに成長した。著書に『「伝説の社員」になれ!』『20代で人生の年収は9割決まる』『エグゼクティブ・ダイエット』など

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