常に「森全体」を見る意識
ダイヤモンド社書籍編集局第三編集部編集長
おもな担当書籍に、ダイヤフェア2021にもノミネートされた『哲学と宗教全史』(ビジネス書大賞2020特別賞、14刷11万部)『ザ・コピーライティング』(広告の父・オグルヴィ絶賛、25刷11万部)『志麻さんのプレミアムな作りおき』(料理レシピ本大賞入賞、22刷18万部)など。1998年から書籍編集をはじめ、全150冊(うち処女作26冊、最新処女作は『売上最小化、利益最大化の法則』)、生涯重版率8割。野球歴14年。「技術と精神がドライブがかった本を、孫の世代まで残る百年書籍を、光のあたらないところに光があたる処女作を」が3大モットー。
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出口:「俯瞰的」「総合的」というと、今は悪い言葉の代表のようですが、本来的には正しいと思います。木を見て森を見ずではなく、森全体を見なければいけない。
今、コロナ禍で、大学の在り方も変化が要求されています。
APU(立命館アジア太平洋大学)でも、「授業はすべてオンラインに切り替えましょう、学生をキャンパスに入れたら怖いですよ」と言う人がいたりします。
でも現状、別府にいる学生は、キャンパスをロックダウンしたら行くところがない。下宿で一人おとなしくしてくれればいいですが、20歳前後の若者がそんなこと、できるはずがない。僕は大学を完全オンライン化したら、学生同士でごはんを食べに行ったりして、かえって感染リスクが高まると考えました。
そこで、「学生が別府にいるのだから、むしろ感染対策を万全にしてキャンパスに集めたほうが安全だし、オンラインと対面のハイブリッドで授業をやってレポートを提出させるほうがいい」と話すと、事務局から「それは気がつきませんでした」といわれたりします。
たしかに大学の授業だけを考えると、完全オンライン化が安全です。でも、総合的・俯瞰的に考えたら、それは「木」であって「森」ではないと思います。
寺田:なるほど。
出口:コロナ禍なので、全国的に大学生の就職内定率が低い状況が続いています。
APUでも就職担当スタッフからいろいろ相談を受けますが、こんな状況では、そもそも仕事が見つからない可能性が高い。大学の本分である「学生を守る」「学生を応援する」立場で考えると、就職が決まらない学生を、卒業後、半年や1年間ケアする方法も考えないといけません。今は学生を最大限支援しながら、あらゆるケースを想定して動いています。