なぜ、経営に「運転資金」が必要になるのか?

3月に発売された新刊『会計の地図』が好調だ。発売2ヵ月を待たず3万部を超え、「もっと早く読みたかった」という声が多数寄せられている。本記事では、この本の中で意外なほど反響の大きい「運転資金」を紹介する。
「運転資金」は、耳にすることは多いが、よくわからないと思われがちな会計用語だ。しかし「時間軸」の概念を取り入れると、グッと直感的になる。その概要を1つの図解で説明する。(構成/編集部・今野良介)

※記事内の図が表示されない場合は、転載元のダイヤモンド・オンラインでご覧ください。

運転資金は「タイムラグ」と関係が深い

「運転資金」という用語がある。

これがまた難しい概念で、敬遠されがちである。

しかし、実際に事業をすることになると重要なので、紹介したい。

運転資金は「売掛金+在庫-買掛金」で計算できる(*)。

果たして、初見でこの式の意味がわかる人って、いるのだろうか?

僕は最初、まったく意味がわからなかった。

なぜ足したり引いたりするんだ、と。

運転資金を理解するためには、「時間軸」の概念が不可欠なのだ。

図で説明する。

なぜ、経営に「運転資金」が必要になるのか?

上の図にあるように、「売掛金」と「在庫」は、資産の一部である。

売掛金とは、将来的にお金を得る権利のこと。在庫とは、商品がまだ売れないで残っている状態のことだ。時間が経ち、在庫が売れて請求書を発行すれば、それは売掛金にかわる。

つまり、「売掛金」と「在庫」は、名称は違うが、在庫が売れたら売掛金になるという意味で、流れとしてはひとつづきなのである。

もうすこし具体的な数字でみてみよう。図の下の部分だ。

たとえば商品をつくり、在庫から販売されてなくなるまで(売掛金になるまで)の期間を15日、売掛金が実際に入金されるまでの期間を60日とする。そうなると、商品をつくってから75日間もお金が入らないことになる。

一方、買掛金は、売掛金の反対で、将来的に支払わなければいけないお金のことだ。取引先から請求書をもらい、翌月末までに支払うことを約束されているような場合である。これが仮に30日後だとすると、逆に30日間はお金を支払わなくてもいいことになる。

つまり、30日後に支払った後、75日後に入金されるまでには、45日のタイムラグが生まれる。

この、タイムラグを埋める分のお金が、運転資金になる。

この運転資金は、「負債」の概念を理解する際に重要になってくる。なぜなら、事業を続けるために必要な運転資金を確保するために、銀行からお金を借りることが多いからだ。企業の短期借入金は、基本的に運転資金のための借入だと言っても過言ではない。

運転資金を理解しておくことが、企業などの経営体に「なぜ負債が必要なのか?」という問いに対する1つの答えになっている。

* 本来、売掛金と買掛金は手形を含めた「売上債権」「仕入債務」という言葉で計算されることが多いが、概念を理解するために簡略化している。
* 運転資金の計算には、「運転資金=流動資産ー有利子負債を除く流動負債」という書き方もある。目的に応じて使い分けられるが、ここでは省いている。

『会計の地図』という本では、「売上」から始まり「のれん」に至るまで、会計でもっとも重要な15の概念を、「すべてつなげて」図解で説明している。

なぜ、経営に「運転資金」が必要になるのか?

「会計」に苦手意識がある人、これまで会計の入門書に挫折してしまった人にこそ、ご覧いただけたらうれしい。