全員参加でないと意味がない

 ただし、研修レベルは高くなくていいと思っていた。

 社内で突出したデータ分析人材を育てることを目標にすると、社員全員が「エクセル経営」に参加できない。

 企業風土を変えることが最終目的なので、全員参加でないと意味がない。

 いまでこそ「分析チーム」が注目されているが、正直言うとはじめは受け身のデータ活用だけでも十分と考えていた。

 研修も後述する「全社員向けデータ分析講習」(分析と言っているが、実際は活用レベルの講習が中心)だけを考えていた。

 ところが、研修を進めるうちに、「3度のメシよりデータ分析好き」というデータサイエンティストまがいの社員、独自に分析ツールを製作するマニアックな社員が現れたので、その能力を伸ばしたほうがいいと判断。「中級者向けデータ分析講習」を新たに用意した。

 仕事をしているのか、マニアとして遊んでいるのかわからない部分もあるが、それはどうでもいい。

 仕事もできて業務もわかり、データ分析も極めてプログラムが組める。そんな人材が社内にいれば「エクセル経営」はどんどん進む。彼らは分析対象に強い興味を持っていたのだ。

土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。