実際、東急も決算説明会の中で、「今後の輸送人員の回復予測に関しては、2023年度までに定期外旅客は従前水準に戻ると想定しているが、定期旅客においては従前の70%程度しか戻らないと考えており、輸送人員全体では従前の85%程度となる想定」と説明している。

 こうした中、福岡を拠点とする大手私鉄の西日本鉄道は今年3月6日、天神大牟田線と貝塚線の一部区間で最大40円の運賃値上げを実施。近畿日本鉄道も昨年、運賃値上げの検討を始めたと公表している。これに続く東急電鉄の運賃値上げ検討表明は、鉄道事業者にとって久々に運賃改定の季節が巡ってきたことを感じさせるものだった。

東急の運賃値上げは
平均で10~20円か

 では東急の運賃値上げはどの程度の規模になるのだろうか。同社の発表を受けて読売新聞(オンライン版)は14日、「東急電鉄、初乗り10円前後値上げを検討」と題して、「東急電鉄の初乗り運賃は税込み130円。値上げ幅は『1桁%』(同社)としており、10円前後の値上げとなる見込みだ」と報じた。

 また時事通信も同日、「東急、初乗り運賃値上げへ 数%程度、収益確保」として、「初乗り運賃について、2023年度までに現行運賃から数%程度引き上げる方針を明らかにした」と報じているが、これだけ読むと初乗り運賃だけが10円値上がりするような印象も受ける。

 しかし、筆者が東急に問い合わせたところ、そういうわけではないようだ。東急広報部が記者に対して行ったレクチャーの中で、具体的な値上げ幅を問われた際に、1桁%程度、初乗り運賃でいえば10円前後、と説明したことが記事になったものだといい、具体的な内容は検討中で、決まっていないという回答であった。

 東急の運賃体系は1~3キロ(初乗り)130円から、51~56キロ480円まで12段階刻みだ。仮に8%の値上げとなれば、初乗り運賃は130円区間は約10円の値上げとなり、480円区間は約40円の値上げとなるが、東急の定期外利用者の平均利用単価は161円(2020年度)なので、多くの利用者にとっては10~20円程度の値上げとなりそうだ。

 2020年度の東急電鉄の鉄道運賃収入は約1000億円なので、8%の運賃改定は単純計算で80億円の増収効果をもたらす。2020年度決算で東急の交通事業(バス含む)は260億円の営業赤字を出しているが、緊急事態宣言が発出された2020年第1四半期(4~6月)と第4四半期(2021年1月~3月)を除けば、交通事業はほぼトントンの数字となっており、現実的な数字といえるだろう。