本当は内定じゃなかった!
学生が知らない「内定の3種類」

 前述のように、企業は6月1日まで「内定」という言葉を使おうとしません。しかし、水面下ではそれよりずっと早くから採用活動が行われており、実際の内定のピークは5月下旬から始まります。それでは、内定を言葉で伝えられない時期に、企業は学生にどのように内定を伝えているのか。そこでは「ささやき」と「励まし」が多用されることになります。順を追って説明しましょう。
 
 実は内定には、「ささやき」「励まし」「本内定」の3種類があります。
 
 本内定は、企業の採用決定権限を持つ担当者から、学生にはっきり「内定」という言葉を使って伝えられるものです。もちろん、よほど優秀な学生にはその前年の夏のインターンでも内定を伝えているかもしれませんが、数は多くはありません。前述のように、本内定は6月1日以降に学生に伝えられるのが一般的です。なので、もちろん6月1日までは証拠が残るメールや文書は出しません。後で何か突っ込まれたとしても、企業はあくまで「内定は出していません」と言い張ることができるのです。

 その前段階で、どうしても企業が採用したい学生には、内定という言葉を使わずに、多くの場合、ただ「大丈夫だよ」と伝えることで内定の意志を伝えます。しかし、ここに落とし穴があります。実は、ニュアンスが違う2種類の「大丈夫だよ」があるのです。就活生にとってはややこしい話ですが、本当に大丈夫な「大丈夫だよ」という「ささやき」と、実はあまり大丈夫ではない「励まし」レベルの「大丈夫だよ」です。

同じ「大丈夫」でも
「ささやき」と「励まし」はどう違う?

「ささやき」は、採用決定権のある者が「内定」の言葉を使わず、学生に内定したことを伝えるために口にします。「6月1日にどこどこの場所(企業の研修所などが指定されることが多い)に来れば、大丈夫だから」と言われれば、6月1日にその場所に内定者が集められたり、あるいは形式だけの最終面接が行われたりして、はっきり「内定」が告げられるということを意味します。「そのことを事前に確約するから大丈夫だよ」というわけです。