「いつも先延ばしする人」が今すぐ変わる1つのコツPhoto: Adobe Stock

スタンフォード大学の行動科学者であり、スタンフォード大学行動デザイン研究所の創設者兼所長が20年かけて開発した「人間の行動を変える衝撃メソッド」を公開した『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』(BJ・フォッグ著、須川綾子訳)が刊行となった。本国アメリカではニューヨーク・タイムズ・ベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、すでに世界20ヵ国で刊行が決まっている。
また、驚くべきはその評判の高さで、米アマゾンでは3000件以上のレビュー、平均4.7星という異例の高評価となっている。
「ダイエット」「勉強」「筋トレ」といった日々の習慣から、「起業」「貯蓄」など大きな目標に向かう行動、悪習を「やめる」という行動、さらにはパートナーや子ども、部下など「他人の行動を変える」方法まで、行動の変化に関するあらゆる秘訣を網羅した驚異的な一冊だ。
著者はそれがどんな種類の行動であれ、すべて「能力・モチベーション・きっかけ」の調整によって変化を起こせると説く。本書の理論を頭に入れれば、今後の人生においてとても大きな武器となり財産となるはずだ。
では、具体的にどんな理論であり手法なのか。本稿では本書から特別に一部を抜粋して紹介する。

「初めの一歩」という行動戦略

 少し前、私は経過観察のため、口腔外科に予約の電話をしなければならなかった。楽しいことではないので、難しい行動でもないのに先延ばしにしていた。

 これは、先延ばしにするのはばかげていると思いつつも避けてしまうことの典型的な例だ。

 先延ばしについて忘れてはならないのは、実際の難しさに負けず劣らず、難しいと「感じる」だけでも障害になるということだ。

 しかも義務を果たさずにいると、頭の中でそれが肥大化し、ますます難しく思えてくる

 私は深い穴にはまり込む前に、「初めの一歩」を試すことにした。医師の電話番号を付箋に書き、電話に貼りつけるのだ(注:「初めの一歩」とは、本書で「習慣を簡単にする方法」の1つとして紹介されている「その行動のいちばん最初のごく小さな行動だけをする」という戦略)。

 私は「番号を書くだけでいい」と自分に言い聞かせ、実行した。

 レベルを下げたことで、私は頭を切り替えることができた。

 番号を書くのは怖いことではない。それなら簡単にできる。

 いざ書いてみると、私はすべての行動の完了に向け、すでに一歩踏み出した状態にあった。

 そこで私はスマホを手に取り、医師の番号を押したのである。

 あなたもこうした気の進まない課題をいくつも抱え、日々気にしているのではないだろうか?

 そんな状態は精神的な疲れにもつながる。

 どんなに小さくてもいいから「初めの一歩」を踏み出せば、私たちの脳が大好きな、勢いを得たという感覚が生まれる。小さな作業を完了すれば自信になり、それが行動を最後まで実行するモチベーションを高めることにもなる。

(本原稿は『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』(BJ・フォッグ著、須川綾子訳)からの抜粋です)

BJ・フォッグ(BJ Fogg, PhD)
スタンフォード大学行動デザイン研究所創設者兼所長
行動科学者
大学で教鞭をとるかたわら、シリコンバレーのイノベーターに「人間行動の仕組み」を説き、その内容はプロダクト開発に生かされている。タイニー・ハビット・アカデミー主宰。コンピュータが人間行動に与える影響についての実験研究でマッコービー賞受賞。フォーチュン誌「知るべき新たな指導者(グル)10人」選出。スタンフォード大学での講座では、行動科学の実践により10週間で2400万人以上がユーザーとなるアプリを開発、リーンスタートアップの先駆けとして大きな話題になった。教え子からインスタグラム共同創設者など多数の起業家を輩出、シリコンバレーに大きな影響を与えている。『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』はニューヨークタイムズ・ベストセラーとなり、世界20ヵ国で刊行が進んでいる。

須川綾子(すがわ・あやこ)
翻訳家
東京外国語大学英米語学科卒業。訳書に『EA ハーバード流こころのマネジメント』『人と企業はどこで間違えるのか?』(ともにダイヤモンド社)、『綻びゆくアメリカ』『退屈すれば脳はひらめく』(ともにNHK出版)、『子どもは40000回質問する』(光文社)、『戦略にこそ「戦略」が必要だ』(日本経済新聞出版社)などがある。