もちろん、こうした動きは公務員だけではない。私立の人気中高一貫校からも、昨年9月に新学期が始まるやいなや、「移民」を理由に退学する人たちが続出、慌てた学校側が学生を追加募集した。公立校に比べて高額な学費と優良な授業環境を誇るこうした私立校ではめったにないことで、裕福な家庭が香港から逃げ出している証拠だと話題になっている。

香港理工大学。2019年11月に追い詰められたデモ隊が16日間籠城し、市民の注目の的になった。現在は部外者は立入禁止に。この事件に関係してすでに1000人を超える人たちが逮捕されている。 Photo by ふるまいよしこ香港理工大学。2019年11月に追い詰められたデモ隊が16日間籠城し、市民の注目の的になった。現在は部外者は立入禁止に。この事件に関係してすでに1000人を超える人たちが逮捕されている 写真:ふるまいよしこ

 こうした移民ブームに対して、政府は相変わらず素知らぬ顔だ。オーストラリアのSBS放送は、この5月初めにニュージーランド政府関係者との投資懇親会の席で、昨今の移民ブームについて尋ねられた林鄭月娥行政長官が「今、海外に出ているのは『逃亡犯』くらいなもの、気にすることではない」と述べたと報道した。香港政府はすぐにそれを否定する声明を発表、また、クローズドな場であったことからその他の報道がなく、真偽のほどはあきらかではない。

 ところが、移民ブームは民主派に限らず、親中派の中でも起きているのだ。富裕層の移民、あるいはすでに海外パスポートを所有している人たちの転出ブームも報道されている。同行政長官はこうした「去る者は追わず」を、いつまで続けていられるのだろうか。