大前提として、利益を不正に大きく見せる方法には、売上が上がっているように見せるか、費用が下がっているように見せるか、2つの手段がある。ワールドコムはこのどちらの手段も行ったが、特に費用を不正に下げた。
不正に操作したお金のうちの79.2%は「回線使用料 *1」だ。ワールドコムにとって回線使用料は、費用の半分を占めるほど大きいものだった。
回線使用料を操作した代表的な方法として、本来費用にするべき回線使用料を資産に計上した。具体的には、他社からの通信インフラによるリース費用の一部を、固定資産として計上したのだ *2。
つまり、回線使用料の実際に計上すべき分を減らし、費用を減らすことで利益を増やした、というのが、ワールドコムの不正会計の大きな特徴である。
ちょうど同時期に他社でもこのような不正会計が起き、「これは個別企業の問題ではなく、米国全体の問題なのではないか」と受け止められ、不正が起こらないよう、SOX法という法律もつくられた。
1つの事例としてワールドコムを取り上げたが、不正会計は一企業の問題ではなく、世界全体に共通した問題であり、今もなお、起こりうる。
しかし、不正会計は、財務3表のつながりを見ると隠し通せないものでもある。それだけ会計の仕組みは完成されている、ということでもあるのだ。
『会計の地図』という本では、「売上」から始まり「のれん」に至るまで、会計でもっとも重要な15の概念を、「すべてつなげて」図解で説明している。
「会計」に苦手意識がある人、これまで会計の入門書に挫折してしまった人にこそ、ご覧いただけたらうれしい。