財務3表がまとめて一発でわかる超図解

3月に発売された新刊『会計の地図』が好調だ。発売2ヵ月を待たず3万部を超え、初心者から学生から経済アナリストから大学教授まで、「もっと早く読みたかった」という声が多数寄せられている。本記事では、会計と言えば真っ先にイメージされるアレを紹介する。
「財務3表」を聞いたことのない人はいないだろう。でも、やっぱりよくわからない。どこを、どう見たら、何がわかるのか、わからない。だから1つにまとめて説明する。直感的にイメージできるように図で見せる。財務3表は、こうつながっている。(構成/編集部・今野良介)

※記事内の図が表示されない場合は、転載元のダイヤモンド・オンラインでご覧ください。

財務3表は、こんなふうにつながっている。

財務3表は、代表的な3つの財務諸表、PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー計算書)をまとめた呼び名だ。企業の経営状態を見える化してくれる、などと言われる。

でも、ここでは財務3表それぞれの詳細な説明はしない。

最も大事なのは「なぜこの3つなのか?」を知ることだ。

3つの関係を考えるために、まず、BS(貸借対照表)から見ていく。

BSから説明を始める理由は、まず「BSが、ある一時点の財産の状態を表すものだから」というヒントにとどめておきたい。あとで詳しく説明する。

財務3表がまとめて一発でわかる超図解

BSは、右側半分が「お金の出どころ」を教えてくれる。

そして左側半分が「お金の使い道」を教えてくれる。

右側は、大きく「負債」と「純資産」の2つに分かれる。たとえば銀行からお金を借りたら、それは負債(他人資本)になり、自らがお金を出資したら純資産(自己資本)になる。

財務3表がまとめて一発でわかる超図解

そして、「現金」「利益」という2つの大事な要素が出てくる。

企業は基本的に、集めたお金を商品や店舗や工場といった資産に変えることでお客さんに価値を提供し、その対価としてまたお金をもらう、という活動を繰り返している。その中で稼いだ利益は、「純資産」に毎年たまっていく。

一方、集めたお金を全く使わずに現金として残しておく、ということも「お金の使い道」の1つになる。だから、資産の中には「現金」も含まれている。

財務3表がまとめて一発でわかる超図解

そして、3つの財務諸表は、次のような関係になっている。

②の損益計算書(PL)は、利益がどう増減したかを表わす。

③のキャッシュフロー計算書(CF)は、現金がどう増減したかを表わす。

冒頭にBSが「ある一時点の財産の状態を表すもの」と書いたのは、「PLとCF」は、BSの「利益と現金」がどう動いたかを表しているものだからだ。

つまり、「PL」と「CF」は、「BS」でつながっている。

そう考えると、財務3表が、なぜこの3つで構成されているかという理由が、少し見えてくる。

財務3表がまとめて一発でわかる超図解

「みなさんが投資してくれたお金をこう使い、こうなりました」

そもそも財務3表は、会社のステークホルダー(利害関係者)に対して、会社の財務の状態を説明するためにある。ステークホルダーというのは、その会社が利益を上げれば恩恵があり、逆に損失を出せば被害を受けるような人たちのことだ。取引先、社員、銀行、国、株主などを指している。

特に、企業に対して出資をしている株主としては、自分が出資したお金が適切に運用されているかを知りたいと思って当然だ。そのため、会社は出資してくれた人に「みなさんが投資してくれたお金をこう使いました。その結果、こうなりました」という説明をする必要がある。その説明をするための書類が、財務諸表である。

財務諸表を使って、会社はステークホルダーとコミュニケーションをとっている。

ステークホルダーは、

BSを見て「資金をどう運用したのか」
PLを見て「どのように利益を生み出しているのか」
CFを見て「その会社にどれだけ体力があるか」

を、それぞれ判断する。

安心してお金を出資できる企業であるかを判断する際の、重要な参考資料なのだ。

1人のビジネスパーソンが財務3表を読む意味

自分の会社の財務3表を見れば、自分の会社が、ステークホルダーに対してちゃんと責任を持って説明できる経営ができているか、ということがわかる。

会社は、社会に対して付加価値を生み出すことで利益を得て、持続的にビジネスを行うことができる。付加価値を生み出せるという信頼があるから、株主は出資する。会社は独立して存在しているのではなく、絶えず社会とコミュニケーションをとりながらビジネスをしているのだ。

株主の期待に答えるだけの成績を生み出せているか?

成績があまりよくないなら、どこに改善の余地があるのか?

財務3表を見れば、そうしたことを考えられる。

会社の全体像を把握しつつ、社会とのよりよい関係を築き信頼を得るためにどうしたらいいかを考えることは、経営者だけではなく、会社に所属する一人ひとりが考えることが大事だ。

90億ドル超の不正操作

さて、財務3表のつながりが見える例として、米国の大手通信会社ワールドコムが2000年前後に起こした有名な不正会計の事件を紹介しよう。

なんと90億ドル以上ものお金を不正に操作し、利益を多く見せようとしたことで、大きく世間を騒がせた。次のページで、具体的に何が起きたのかを図解で紹介する。