最低賃金を1500円に引き上げると起きる
経済学から予測できる「悪いこと」

 さて、ここで「ちょっと待ってよ」というお話をします。

 実は最低賃金政策は経済学にとっては基本的な題材で、引き上げを行った場合何が起きるのか、いいことだけでなく悪いこともすべてわかっています。

 そこで、最低賃金を1500円に引き上げるという、労働者にとってはとてもいい政策を本当に実施すると、どんな悪いことが起きるのかを解説しましょう。

 最低賃金のような政策のことを、経済学では「下限価格統制」といいます。よく似た例をいうと、日本では以前、米価が国によって決まっていました。それよりも安く売られている自主流通米は、法律上は厳密にいうと違法で、米は農協を通じてもっと高い価格で買い上げられなければいけなかったのです。

 あまり安い市場価格で取引されると、米の生産者が廃業してしまう。それでは農業の未来が困るということで、米の下限価格が設定されていたのです。

 このように、米の価格が市場価格よりも高く統制されると何が起きるかというと、米の需要が減ります。米は高いからパンを食べようという国民が増えるのです。これは農協の望まぬ方向なのですが、実際に1980年頃はそのように国民の米離れが進みました。

 最低賃金の引き上げも、これと同じ問題を引き起こします。需要よりも高い水準に法律で賃金の下限を決めてしまうため、需要、すなわち求人が減るのです。実際、最低賃金を高く設定しているヨーロッパ諸国では伝統的に若者の失業が大きな社会問題になっています。